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抗がん剤治療を受けている間は、ふだんの生活で「これは大丈夫かな?」と迷う場面が増えてきます。多くの方は、看護師や薬剤師との会話、あるいは同じ治療を受けている方の様子から、自然とコツをつかんでいきます。一方で、「やってはいけないこと」「できるだけ避けたほうがよいこと」は、意外と知られていないことも少なくありません。
ここでは、米国MD Anderson Cancer Centerをはじめとするがん専門施設の患者向け情報や国内のガイドラインをふまえ、当院でがん薬物療法を受けておられる方によくお伝えしている「治療中に避けたい10のこと」を、2026年の最新の考え方を反映してまとめました。あくまで一般的な注意点ですので、ご自身の治療内容によって異なる点は、必ず主治医・スタッフにご確認ください。
1生の肉・魚介類を控える
加熱が不十分な肉や魚介類は、サルモネラや腸管出血性大腸菌などの食中毒の原因になることがあります。抗がん剤は免疫を担う細胞にも影響するため、治療中は感染への抵抗力が落ち、健康なときよりも重症化しやすくなります。お寿司や生牡蠣、レアのステーキなどは、治療が一段落するまでは控えるのが安心です。
十分に加熱した料理であれば、多くの病原体は死滅します。温かい料理は温かいうちに食べ、常温で長時間放置したものは避けましょう。白血病やリンパ腫など、より強力な治療を受けている場合には、生野菜・生果物にも制限がかかることがあります。
2副作用を悪化させる食べ物を避ける
抗がん剤の副作用として口内炎が出ることがあります。硬いもの、辛いもの、酸味の強いものは、口の中の痛みを悪化させることがあるため、症状があるときは控えめにしましょう。
とくにグレープフルーツは、一部の薬の代謝に影響を与えることが知られており、治療中は避けたほうが無難です。一方で、オレンジやレモネード程度であれば過度に心配する必要はありません。オキサリプラチンなど、寒冷刺激でしびれが出るタイプの薬を使っている場合は、冷たい飲み物・氷菓も控えてください。
3新しい薬・サプリメントを自己判断で始めない
ビタミン不足の補正など、医師が必要と判断して処方するサプリメントは問題ありません。しかし、自己判断で新しいものを始めるのは避けてください。
CBDオイルや一部の健康食品、ハーブ類、メラトニンなどは、抗がん剤を含むほかの薬と相互作用を起こす可能性があります。その結果、薬の効果が弱まったり、思わぬ副作用が出たりすることがあります。市販薬や漢方薬も含め、新しく何かを飲み始める前には、必ず一度ご相談ください。
4喫煙・飲酒を控える
アルコールは肝臓で処理されますが、多くの抗がん剤も同じく肝臓で代謝されます。両者が重なると肝臓への負担が大きくなるため、治療中の飲酒は控えることをおすすめします。アルコールは脱水も招きやすく、吐き気を強めたり治療をつらく感じさせたりする原因にもなります。
喫煙・電子タバコ・加熱式タバコも体への負担が大きく、治療中は完全にやめるのが理想です。禁煙が難しい場合は、当院でもご相談を承ります。
5過度な紫外線を避ける
抗がん剤の中には、日光に対する皮膚の感受性を高め、日焼けしやすくするものがあります。日中に外出する際は、長袖などの衣類やSPF30程度の日焼け止めで肌を守り、日差しの強い時間帯の外出はできるだけ避けましょう。日焼けサロンの利用は控えてください。
6妊娠・パートナーへの薬剤曝露を避ける
抗がん剤は精子や卵子にも影響を与えるため、治療中は確実な避妊が大切です。また、薬の一部は体液中にしばらく残ることがあるため、パートナーへの曝露を防ぐ目的で、コンドームなどのバリア法を併用することがすすめられます。多くの薬は48時間ほどで体外へ排出されますが、その間はわずかに分泌物中へ移行する可能性があります。具体的な避妊期間は治療内容によって異なるため、主治医にご確認ください。
7洗濯・掃除を手伝う方は予防策を
ご家族など周囲の方が洗濯や身のまわりの世話を手伝う場合は、治療中の方の汚れた衣類やリネンに触れる際に手袋を着けることをおすすめします。在宅で内服の抗がん剤を扱う場合も同様で、介助される方が素手で薬に触れると、ご自身が薬剤を吸収してしまうおそれがあります。手袋の着用と、触れたあとの手洗いを習慣にしましょう。
8体調の悪い人との接触を避ける
治療中は免疫の働きが低下し、感染症にかかりやすくなります。インフルエンザ、RSウイルス、新型コロナウイルスなどの呼吸器ウイルスが流行している時期は、とくにマスクの着用が有効です。明らかに体調の悪い方とは、症状が完全に治まるまで距離を取りましょう。こまめで丁寧な手洗いも、感染予防にとても効果的です。
9無理をしすぎない
抗がん剤のもっとも多い副作用のひとつが、強いだるさ(倦怠感)です。適度な運動を続けられる方もいますが、家事をこなすのもつらいと感じる方もいます。治療中に体を動かすこと自体は良いことですが、疲れを感じたら体の声に耳を傾け、しっかり休んでください。「気合いで乗り切る」時期ではありません。
10疑問や不安を一人で抱え込まない
抗がん剤治療をスムーズに進めるいちばんの鍵は、医療スタッフとの良いコミュニケーションです。「こんなことを聞いてもいいのかな」と思うようなことが、実は治療に影響することもあります。やってみようと思っていること、気になっていることは、どんな小さなことでも遠慮なくご相談ください。当院では、外来でも在宅でも、治療と生活の両面から支えていく体制を整えています。
⚠️ ここに挙げた内容は一般的な注意点です。お一人おひとりの治療内容・体調によって、優先すべき点や制限の程度は変わります。判断に迷うときは、自己判断せず、まずはお気軽にご相談ください。
監修:瀬尾卓司(がん薬物療法専門医・家庭医療専門医)
うじな家庭医療クリニック
〒734-0003 広島県広島市南区宇品東6-2-47/TEL:082-256-4500