医療コラム

  1. HOME
  2. 医療コラム
 

COLUMN医療コラム

【広島市南区】がん治療中の夏の過ごし方|うじな家庭医療クリニック

広島の夏は、瀬戸内特有の蒸し暑さが続きます。健康な方でもこたえる季節ですが、がんの治療を受けている方は、暑さの影響をより受けやすい状態にあります。「例年どおりに過ごしていたら、思いのほか体調を崩してしまった」というご相談は、毎年この時期に増えます。

この記事では、米国のMDアンダーソンがんセンターやメイヨー・クリニックが患者さん向けに公開している情報も参考にしながら、治療中の方とご家族が、この夏を安全に過ごすためのポイントを整理しました。在宅で療養されている方やご家族に向けた注意点もまとめています。

この記事でわかること

  • がん治療中に脱水・熱中症が起こりやすい理由
  • 日差しとのつきあい方(治療によって変わります)
  • 夏の感染対策と、食べもので気をつけること
  • プール・海・温泉はどう考えるか
  • すぐに医療機関へ連絡すべきサイン

💧 いちばんの落とし穴は「脱水」です

MDアンダーソンがんセンターの放射線腫瘍医は、暑さへの対処でがん患者さんにとって最大の課題は水分を保つことだと述べています。がんそのものと治療の副作用のどちらもが、いつもどおりに食べたり飲んだりすることを難しくするためです。

味覚の変化、吐き気、下痢――理由はさまざまでも、結果として行き着く先は同じ「脱水」です。さらに、のどの渇きを感じた時点で、体はすでにかなり水分を失っています。渇いてから飲むのでは間に合いません。

💡 水分がとりにくいときの工夫

  • 1日を通して、少しずつ何度も口に含む
  • ただの水が飲みにくければ、きゅうりや果物を入れて冷やした水に
  • 糖分の少ないスポーツ飲料や、氷菓を利用する
  • お茶やコーヒーなどカフェインを含むもの、アルコールは控える
  • 吐き気で飲めないときは、我慢せず担当医に相談する

吐き気があると飲む気力がなくなり、飲めないことでさらに気分が悪くなる――この悪循環に入る前に手を打つことが大切です。腎臓から排泄されるお薬もあるため、水分は治療そのものを安全に進めるうえでも意味があります。

🌡️ 熱中症のサインを見逃さない

脱水の初期症状には、頭痛、吐き気、だるさ、めまい、便秘などがあります。これらは治療の副作用とよく似ているため、「いつもの副作用だろう」と見過ごされやすいのが厄介なところです。

⚠️ 熱疲労(熱中症の前段階)のサイン

  • 筋肉のけいれん・こむら返り
  • 顔色が青白く、皮膚がじっとり湿っている
  • 尿の量が減っている
  • 大量の発汗
  • めまい・脱力感

🚑 ここまでくれば救急要請を

  • 皮膚が赤く熱い
  • 体温が著しく高い(およそ39.5℃以上)
  • 言動がおかしい、話がかみ合わない
  • 嘔吐している
  • 倒れた、意識がはっきりしない
  • 脈が速く強く打っている

※ 迷わず119番を。待つあいだは涼しい場所に横にし、濡らしたタオルで体を冷やしてください。

▶ 広島の暑さ指数(WBGT)を確認する|環境省 熱中症予防情報サイト

☀️ 日差しに敏感になることがあります

一部の薬物療法や放射線治療では、皮膚が日光に対して敏感になることがあります。ただし、どの程度気をつけるべきかは、がんの種類と受けている治療によって異なります。

ここでよくある誤解があります。「乳がんで胸に放射線を当てているから、腕や脚も日に当ててはいけない」と考える方がいらっしゃいますが、これは正しくありません。薬物療法は全身に作用しますが、放射線治療の皮膚への影響は、原則として照射している部位に限られます。

☂️ 日差し対策の基本

  • 日差しの強い10時〜16時は、日陰か屋内で過ごす
  • SPF30以上の日焼け止めを、こまめに塗り直す
  • 唇にもUVカットのリップクリームを
  • つばの広い帽子と、UVカットのサングラス
  • UVカット素材の長袖など、覆う衣類を活用する

帽子は、治療で髪が抜けている方や、頭頸部に放射線治療を受けている方には特に大切です。頭皮は普段守られている部分なので、無防備なまま日に当たると強く傷みます。ウィッグは暑さがこもりやすいため、屋外では通気性のよいスカーフに替えるのもひとつの方法です。

▶ 皮膚のトラブル|国立がん研究センター がん情報サービス

🦠 免疫が下がっている時期の、夏の感染対策

薬物療法を受けていると、白血球(特に好中球)が減る時期があります。この期間は感染に対する抵抗力が下がっており、夏は食中毒のリスクが高まる季節でもあるため、二重の注意が必要です。

食べもので気をつけること

場面 気をつけたいこと
調理 中心部まで十分に加熱する。まな板・包丁は生ものと分ける
保存 作り置きを常温に置かない。食後は速やかに冷蔵へ
屋外の食事 バーベキューや持ち寄りは、温度管理が難しいため特に慎重に
生もの 刺身・生卵・加熱していないものは、時期によって控える判断が必要

どこまで気をつけるべきかは、受けている治療の内容と、その時点の血液検査の値によって変わります。「一律に生ものは禁止」ということではありません。ご自身の場合はどうか、担当医や看護師にご確認ください。

⚠️ 治療中に発熱したら、様子を見ないでください

白血球が減っている時期の発熱は、「発熱性好中球減少症」として緊急の対応が必要な状態のことがあります。夏バテや熱中症と区別がつきにくいのが難しいところです。治療中に発熱や強い悪寒があったときは、時間帯にかかわらず、あらかじめ指示されている連絡先へご連絡ください。

▶ 感染しやすい・白血球減少|国立がん研究センター がん情報サービス

🏊 プール・海・温泉はどう考える?

暑い日に水に入って涼みたくなるのは自然なことですが、治療中の方は、まず担当医に確認してください。MDアンダーソンは次のような考え方を示しています。

  • プール:放射線治療によって塩素などの薬剤に敏感になることがあります。照射部位が水に浸からなければ問題ない場合もありますが、管理が行き届いていないプールは感染源になりえます
  • 海・川・池:自然の水域は一般におすすめされません。特に免疫が下がっている方や皮膚に傷がある方は、暖かく流れのよどんだ水に細菌が繁殖しやすいため避けてください
  • サウナ・岩盤浴・ホットヨガ:高温多湿の環境では汗による体温調節がうまく働きません。この時期は控えるのが無難です

中心静脈ポートやカテーテルが入っている方は、入浴・水泳の可否について別途の指示があるはずです。自己判断せず、必ず確認をお願いします。

💊 見落としがちな「お薬の保管」

メイヨー・クリニックは、暑さによってお薬が劣化することがある点にも注意を促しています。真夏の車内は数十分で高温になります。

  • 受診の帰りに買い物へ寄る際、お薬を車内に置いたままにしない
  • 直射日光の当たる窓辺や、家電の上に置かない
  • 外出時は保冷バッグを活用する
  • 保管方法に指定のあるお薬は、必ずその指示を守る

😮‍💨 だるさが強い時期の、体の動かし方

治療に伴うだるさ(倦怠感)は、休んでも取れにくいのが特徴です。そこに暑さが加わると、消耗はさらに大きくなります。外に出ること自体は気分にとって良いものですが、真夏は空調の効いた屋内で体を動かすほうが安全です

屋外を歩くなら、早朝か日が傾いてから。保冷ボトルや冷却タオルを持ち、無理をしないこと。「今日は動けない」という日があっても、それは怠けではありません。体が回復に力を使っているサインです。

🏠 在宅で療養されている方・ご家族へ

在宅診療でうかがっていて、夏にもっとも多いのが「室内での脱水」です。屋外にいなくても、エアコンを使わずに過ごしていれば熱中症は起こります。ご高齢の方は暑さやのどの渇きを感じにくく、ご本人の自覚が当てになりません。

👀 ご家族が見ておきたいポイント

  • 室温と湿度を、体感ではなく温湿度計で確認する
  • 飲んだ量・尿の回数を、なんとなくでも把握しておく
  • 「電気代がもったいない」とエアコンを止めていないか
  • いつもより口数が少ない、うとうとしている、受け答えが違う
  • 脇の下や口の中が乾いていないか

療養が進んだ段階では、水分をどこまで補うかの判断が難しい場面もあります。ご本人にとって何が楽なのかを一緒に考えていくのが在宅診療の役割です。迷われたときは、抱え込まずご相談ください。

📋 この夏のチェックリスト

  • □ のどが渇く前に、少しずつ水分をとっている
  • □ カフェイン・アルコールに偏っていない
  • □ 10時〜16時の外出を避けている
  • □ 日焼け止め・帽子・サングラスを使っている
  • □ 食材はしっかり加熱し、常温に放置していない
  • □ 室温を温度計で確認し、エアコンを使っている
  • □ お薬を車内や日なたに置いていない
  • □ 発熱時の連絡先を、家族も含めて把握している

🏥 治療中の「困りごと」もご相談ください

当院はがん薬物療法専門医・家庭医療専門医が診療にあたり、がん薬物療法と在宅診療に対応しています。大きな病院で治療を受けながら、体調の変化や日常生活の困りごとを地域で相談できる場所として、宇品・元宇品・出島エリアの皆さまを支えています。通院が難しくなってきた段階でのご相談も承ります。

うじな家庭医療クリニック
診療科目:内科・小児科・がん薬物療法・在宅診療
〒734-0003 広島県広島市南区宇品東6-2-47
TEL:082-256-4500

監修

瀬尾 卓司(せお たくじ)

家庭医療専門医・がん薬物療法専門医・総合診療指導医

うじな家庭医療クリニック 院長。内科・小児科・がん薬物療法・在宅診療を通じて、広島市南区宇品エリアの地域医療に取り組んでいます。
〒734-0003 広島県広島市南区宇品東6-2-47/TEL:082-256-4500

※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたものであり、個々の診断・治療を保証するものではありません。適切な対応は、受けている治療の内容や体の状態によって異なります。実際の療養にあたっては、担当医の指示を優先してください。