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【広島市南区】海外の抗がん剤を自費で使いたいと思ったら|うじな家庭医療クリニック

「海外では承認されているのに、日本では保険が使えない」「海外にはあるのに、日本にはまだない薬を使いたい」。がんの治療を続けるなかで、こう思ったことのある患者さんやご家族は少なくないはずです。

私自身、国内で承認されている薬を適応外で投与したり、海外から薬を輸入して投与したりした経験があります(いずれも自費診療です)。ですから、その気持ちはよく分かります。ただ、「自費でもいいから使いたい」と希望される方すべてにとって、それが最善の選択になるかというと、そうではありません。今日はその理由を、できるだけ率直に書いてみます。

新薬の副作用は、発売後に分かることが珍しくない

抗がん剤には、思いがけない副作用が出ることがあります。特に「日本人に多い副作用」が、国内で発売されてから初めて明らかになることは珍しくありません。

イレッサ(一般名:ゲフィチニブ)の訴訟を覚えている方もおられるでしょう。2002年、世界のどの国よりも先に日本で承認された肺がんの分子標的薬で、承認前から「夢の新薬」と大きな期待を集めていました。ところが発売から3か月足らずで間質性肺炎による死亡例が相次いで報告され、緊急安全性情報が出される事態になりました。承認から1年間で294人の死亡が報告され、その後の調査では、日本人は欧米の患者さんに比べて間質性肺炎を起こす頻度が高いことも分かってきました。

「薬害」としてメディアでも大きく取り上げられたため、本来なら治療の対象になるはずの患者さんが過度に怖がって投与を断る、という逆の問題も起きました。私が医学生から研修医になる頃の出来事で、今でも鮮明に覚えています。

ここから学べることは2つあります。ひとつは、正式な審査を経て承認された薬でさえ、日本人での副作用の全体像は発売後にしか分からないことがあるということ。もうひとつは、日本で承認されていない薬は、日本人での安全性の情報がさらに乏しいということです。

「海外にはあるのに、日本にはない薬」は本当に増えている

昨今は抗がん剤の価格が非常に高くなり、「薬価が下がり続ける日本で、新しい薬が今後本当に発売されるのか」という懸念が広がっています。実際、厚生労働省の調査では、欧米で承認されているのに国内では未承認の医薬品が143品目あり、そのうち86品目は国内で開発すら始まっていない(2023年3月時点)と報告されています。いわゆる「ドラッグ・ロス」です。

「自費でも手に入れたい」という気持ちは、私も理解しています。ただ、その前に確認してほしいことがあります。

まず探ってほしい、4つの公的な道

自費投与を考える前に、まず「自分が対象になる公的な仕組みがないか」を探ることを強くおすすめします。主なものは次の4つです。

  1. 治験・臨床試験:新薬の承認に向けて行われる試験です。治験薬の費用は原則として企業が負担し、副作用が出たときの対応や補償の体制があらかじめ決められています。
  2. 先進医療B:未承認薬や適応外薬を用いる治療を、国が認めた医療機関で受けられる制度です。先進医療にあたる部分は自費ですが、それ以外の診察や検査には保険が使えます。
  3. 患者申出療養:患者さんからの申し出を起点に、未承認薬などを保険診療と併用して使えるようにする制度です(2016年開始)。かかりつけ医や主治医に相談し、臨床研究中核病院を通じて国に申請します。
  4. 拡大治験(人道的見地から実施される治験):命に関わる病気で有効な治療法がなく、治験の参加基準を満たさない患者さんに、開発の最終段階にある治験薬を治験の枠組みで提供する制度です。

これらは、国立がん研究センター「がん情報サービス」の「がんの臨床試験を探す」からまとめて検索できます。かかりつけの腫瘍内科の先生や、がん診療連携拠点病院の「がん相談支援センター」に相談するのもよい方法です。

「第III相試験では、新薬に当たるとは限らない」という不安について

第III相試験の多くは「標準治療」と「新薬」を比べる試験なので、参加しても必ず新薬の側に割り当てられるわけではありません。「海外ではもう良い結果が出ているのに、なぜ日本でまた試験をするのか」という疑問もよく分かります。

ただ、知っておいてほしい数字があります。第III相試験まで進んだ薬のうち、承認申請にたどり着くのは全領域で6割弱、がんの領域では4〜5割程度にとどまることが、海外の複数の調査で報告されています。つまり、第III相まで来た新薬のおよそ半分は、期待どおりの結果を出せずに消えていくのです。「新薬=標準治療より良い薬」とは限らない、というのが現実です。

また、海外での良い結果がそのまま日本人に当てはまるかどうかは、実際に日本人で確かめるまで分かりません。それがまさに、先ほどのイレッサの教訓です。

それでも自費での投与を考えるとき

対象となる治験がない、適格基準を満たせなかった、結果を待つ時間的な余裕がない。そうした場合には、自費での投与がひとつの選択肢になりうるかもしれません。私が自費投与を行ったのも、そうした状況にある患者さんでした。

ただし、その場合に必ず確認してほしいことがあります。新薬は、投与する医師も含めて「誰も慣れていない薬」だということです。

  • 副作用が出たとき、誰がどのように評価するのか
  • 入院が必要になったとき、受け入れてくれる病院が決まっているか
  • 夜間や休日に具合が悪くなったとき、どこに連絡すればよいのか
  • 保険診療との併用(混合診療)は原則できないため、関連する診察や検査まで自費になる可能性を理解しているか
  • 海外から輸入した薬の場合、正規の入手経路か。国内の医薬品副作用被害救済制度の対象外であることを理解しているか

想像してみてください。新薬を投与した数日後に、予期せぬ副作用で息苦しさや強い腹痛が出たとします。投与した医師はクリニック所属で入院設備はなく、夜間は連絡がつかないかもしれません。救急車を呼び、「〇〇クリニックで海外の新薬を投与されている」と伝えたとき、その患者さんを受け入れてくれる救急外来がどれだけあるでしょうか。正直に言って、非常に難しいと思います。

自費投与は「薬を手に入れること」がゴールではありません。「安全に投与し、何かあったときに支える体制」まで含めて、初めて成り立つものです。

ご注意:患者さんご自身がインターネットなどで海外の薬を個人輸入し、医師の管理なしに服用することは、偽造品や品質の問題もあり、絶対におやめください(厚生労働省「医薬品等の個人輸入について」)。

私の外来でできること

がん薬物療法専門医として、そして家庭医として、私の外来では次のようなお手伝いができます。

  • 治験・先進医療B・患者申出療養・拡大治験など、対象になりうる公的な選択肢の整理
  • 実施している病院へのご紹介や、主治医の先生との連携
  • それでも自費投与を検討したい場合の、費用・リスク・体制まで含めた率直な話し合い

「自費でも投与してほしい」というご希望に、必ずお応えできるとは限りません。ただ、まずは話を聞いてみたい、選択肢を一緒に整理してほしいという方は、院長外来にご連絡ください。時間をとってお話しします。

自費(自由診療)での抗がん剤治療について

  • 当院で自費での抗がん剤治療を検討する場合、対象となる薬・投与方法・想定される副作用・費用は、診察のうえ個別に文書でご説明します。費用は薬剤の種類や投与回数によって大きく異なります。【要確認:費用の目安を記載する場合はここに/ご相談自体の扱い(保険診療の院長外来で対応するか、自費相談料を設けるか)】
  • 国内未承認の薬を用いる場合は、医師が地方厚生局の輸入確認を受けて輸入します。未承認薬は国内で有効性・安全性が確認されておらず、医薬品副作用被害救済制度の対象外です。海外での承認状況や安全性情報は、その都度ご説明します。
  • 自費の治療と保険診療の併用は原則として認められていないため、関連する一連の診療が全額自己負担になる場合があります。
  • 効果や副作用には個人差があります。診察の結果、当院での投与は適切でないと判断した場合は、投与をお受けできないことがあります。

参考・出典
・国立がん研究センター がん情報サービス「研究段階の医療(臨床試験、治験など)について
・厚生労働省「患者申出療養の概要について
・医薬品医療機器総合機構(PMDA)「人道的見地から実施される治験について
・厚生労働省「ドラッグ・ロスの実態調査と解決手段の構築 研究班の整理結果」(2025年3月)
・Hay M, et al. Nat Biotechnol. 2014;32:40-51 / Wu YY, et al. Clin Transl Sci. 2021;14:339-350(第III相試験からの承認申請率)

がん治療の選択肢について相談したい方へ

関連する受診は、まずは院長外来へ。治験や患者申出療養などの公的な選択肢の整理から、自費投与を検討する場合の率直なご相談まで、時間をとってお話しします。

院長診察日:火曜午前・水曜・木曜午後・金曜・土曜

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うじな家庭医療クリニック(内科・小児科・がん薬物療法・在宅診療)
〒734-0003 広島県広島市南区宇品東6-2-47
TEL:082-256-4500

監修:瀬尾卓司(がん薬物療法専門医・家庭医療専門医・総合診療指導医)

うじな家庭医療クリニック院長。沖縄県立中部病院、亀田総合病院、国立がん研究センター、国立国際医療研究センターなどで研修を積み、広島へ。がん薬物療法と家庭医療の両方の専門医として、がん患者さんの治療と生活を地域で支える診療を行っている。