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立ちくらみは「年のせい」じゃない|広島市南区うじな家庭医療クリニック

椅子から立ち上がった瞬間、視界が暗くなる。朝ベッドを出るたびにフラつく。「年のせいかな」と思っていたら、それは起立性低血圧のサインかもしれません。

2026年4月、世界有数の医学誌『JAMA Internal Medicine』に、起立性低血圧の最新レビューが掲載されました。「頻度は高いのに見逃されやすい」と指摘されたこの病態について、転倒・骨折予防の観点からわかりやすく解説します。

起立性低血圧とは何か

立ち上がると重力で血液が足に集まります。健康な人では自律神経が瞬時に反応し、脳への血流を維持します。この調整が遅れると、立位直後に血圧が急落する。それが起立性低血圧です。

医学的な診断基準は、立ち上がって3分以内に上の血圧が20mmHg以上、または下の血圧が10mmHg以上低下する状態です。

こんな症状はありませんか?

次の症状が「立ったときだけ」起こり、座ると楽になる場合は要注意です。

  • 立ち上がると目の前が暗くなる・視界がぼやける
  • めまい・ふらつきを感じる
  • 頭がくらっとして倒れそうになる
  • 気分が悪くなる・冷や汗が出る
  • 原因がわからない転倒を繰り返している
症状がなくてもリスクが高い方
  • 70歳以上のフレイル(虚弱)状態の方
  • パーキンソン病・認知症などの神経変性疾患がある方
  • 自律神経の病気がある方
  • 原因不明の転倒が続いている方

なぜ危険? 転倒・骨折との深刻な関係

今回のJAMAレビューが強調するのは、起立性低血圧が転倒・骨折リスクの上昇・QOL低下・死亡率の増加と関連しているという事実です。

立ち上がった瞬間のふらつきは、高齢者にとって転倒・大腿骨骨折→寝たきりという深刻な連鎖の引き金になります。また脳への血流が慢性的に不安定になることで、認知機能や生活の質にも影響が出ます。

一緒に確認すべき2つの病態

治療方針を決めるうえで、以下の合併を必ずスクリーニングします。

食後低血圧

食事後1〜2時間は、消化のために腸への血流が増え、血圧が下がりやすくなります。食後に眠くなる・ぼーっとする方は要注意。

臥位高血圧

横になると逆に血圧が上がる方も多くいます。昇圧薬が臥位時に過度な高血圧を引き起こす可能性があるため、治療前に確認が必須です。

どうやって調べる?スクリーニングの方法

クリニックでは次の手順で測定します。ご自宅でも家庭血圧計で簡易チェックが可能です。

  1. 横になった状態で5分間安静にしてから血圧・脈拍を測定する
  2. 立ち上がる
  3. 立位1分後・3分後に再び血圧を測定する

家庭では「横になった状態」と「立ち上がった直後」の血圧を記録してご持参ください。内服薬の確認(降圧薬・利尿薬・前立腺の薬など)もスクリーニングの重要な一環です。

治療はどうする?まず生活習慣から

JAMAレビューは非薬物療法が第一選択と明示しています。まず次の対策を試みます。

塩分・水分摂取量を増やす(医師の指示のもとで)
弾性ストッキング・腹部圧迫帯の着用
ゆっくり立ち上がる習慣をつける
頭を少し高くして眠る
食後すぐに動かず少し横になる
内服薬の見直し(ポリファーマシー対策)

薬物療法について

非薬物療法でも改善しない場合、医師の判断で薬物療法を検討します。重要なのは、「血圧の数値」ではなく「症状の改善と転倒予防」を目標にするという考え方です。合併症に応じた個別化した治療計画が求められます。

この記事のまとめ
  • 立ちくらみは「年のせい」ではなく起立性低血圧の可能性がある
  • 転倒・骨折・死亡リスクの上昇と関連しており、放置は禁物
  • 70歳以上のフレイルの方は症状がなくてもスクリーニングを推奨
  • 食後低血圧・臥位高血圧の合併を必ず確認する
  • まず非薬物療法(生活習慣・内服薬見直し)から対処する
  • 治療目標は「血圧の数値」ではなく「症状改善と転倒予防」

「立ちくらみが気になる」「転倒が増えた」「薬が多くて心配」

外来・訪問診療どちらでも対応しています。
広島市南区宇品エリアの方、在宅療養中の方もお気軽にご相談ください。

瀬尾
監修
瀬尾 卓司(せお たくじ)
うじな家庭医療クリニック 院長
総合内科専門医・がん薬物療法専門医・家庭医療専門医
参考文献:Moloney D, Youssef A, Okamoto LE. Management of Orthostatic Hypotension: A Review. JAMA Intern Med. Published online April 6, 2026. doi:10.1001/jamainternmed.2026.0284