医療コラム

  1. HOME
  2. 医療コラム
 

COLUMN医療コラム

【宇品】子どものアトピー かゆみ止めが効かない時の治療|うじな家庭医療クリニック

「かゆみ止めの飲み薬を毎日飲ませているのに、夜になるとかきむしってしまう」——お子さんのアトピー性皮膚炎で、こんなお悩みはありませんか。2026年7月、英国の医学誌BMJに、アトピー性皮膚炎に対するかゆみ止めの飲み薬(抗ヒスタミン薬)の効果を検証した大規模な解析が発表されました。この記事では、その結果と、塗り薬で十分に良くならないときに検討する注射薬・飲み薬による治療について、広島市南区宇品のうじな家庭医療クリニックが解説します。

この記事でわかること

  • かゆみ止めの飲み薬は、アトピー性皮膚炎にどのくらい効くのか
  • かゆみを抑えるために大切な治療の順番
  • お子さんが使える注射薬・飲み薬と、費用の考え方

💊 かゆみ止めの飲み薬は、アトピーにどのくらい効く?

アトピー性皮膚炎のかゆみに対して、「抗ヒスタミン薬」と呼ばれるかゆみ止めの飲み薬が処方されることは少なくありません。花粉症やじんましんでもよく使われる、身近なお薬です。

2026年7月にBMJに掲載された研究では、これまでに世界で行われた47の臨床試験(小児と成人あわせて6,230人、主に中等症〜重症のアトピー性皮膚炎)をまとめて解析し、ふだんの治療に抗ヒスタミン薬を追加したときの効果を検証しました。主な結果は次のとおりです。

  • かゆみや皮膚症状は、偽薬(プラセボ)と比べてわずかに改善したものの、その差は患者さんが「良くなった」と実感できる目安を大きく下回った
  • 睡眠の改善や、症状の悪化(再燃)を防ぐ効果は、はっきりしなかった
  • 眠気が出やすい古いタイプ(第一世代)の抗ヒスタミン薬では、眠気や集中力の低下などの副作用が増える可能性が高い

かゆみの強さ(0〜10点)でみた改善の大きさ

ふだんの治療に抗ヒスタミン薬を追加した場合の、偽薬との差

患者さんが改善を実感できる目安:3点

 

抗ヒスタミン薬を追加したときの改善:約0.9点

 

バーの長さは10点満点に対する割合です。出典:Chu AWL, et al. BMJ. 2026;394:e100163

皮膚症状の重症度スコアでも同様に、改善は実感できる目安(83点満点中およそ8点)を大きく下回る約2点にとどまりました。研究チームは、アトピー性皮膚炎の治療として抗ヒスタミン薬を決まりごとのように使うことは支持されないと結論づけており、この結果は米国のアレルギー関連学会による診療ガイドラインの改訂に活用される予定です。

なぜ、かゆみ止めの飲み薬は効きにくいの?

アトピー性皮膚炎のかゆみは、ヒスタミンだけでなく、皮膚の炎症にともなって作られるさまざまな物質(IL-31やIL-4、IL-13など)によって引き起こされていると考えられています。そのため、ヒスタミンの働きを抑えるだけの飲み薬では、かゆみを十分に抑えにくいのです。

日本のガイドラインでも、抗ヒスタミン薬は塗り薬による治療と組み合わせて使う「補助的な治療」と位置づけられています。日本皮膚科学会の一般向け解説でも、飲み薬だけでアトピー性皮膚炎の炎症やかゆみを抑えきれるものではないと説明されています(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「かゆみ止めの飲み薬にはどんなものがありますか?」)。

📌 では、抗ヒスタミン薬はやめたほうがいいの?

自己判断で中止せず、まずは主治医にご相談ください。抗ヒスタミン薬は、アレルギー性鼻炎(花粉症)やじんましんなどを合併している場合には、その病気の治療として役立つお薬です。当院では「何のために飲んでいるのか」を一緒に確認し、続けるお薬と見直すお薬を整理します。とくに眠気が出やすいタイプのお薬は、お子さんには慎重に判断します。

🧴 かゆみを抑える基本は「皮膚の炎症を抑えること」

アトピー性皮膚炎のかゆみは、皮膚の炎症そのものから生まれます。かゆみを落ち着かせるには、炎症を抑える治療を、症状に合わせて段階的に組み立てることが大切です。治療の流れは、おおむね次のようになります。

1

すべてのお子さん:スキンケアと悪化要因の対策

入浴後すぐの保湿を全身に行い、汗・よだれ・衣類のこすれなど、悪化のきっかけを減らします。

▼

2

湿疹があるとき:炎症を抑える塗り薬

ステロイドの塗り薬に加えて、ステロイド以外の塗り薬も乳児期から使えるものが増えています。良くなった後も週2〜3回塗って再燃を防ぐ「プロアクティブ療法」が大切です。

▼

3

塗り薬で十分に良くならない中等症以上:注射薬・飲み薬による全身治療

スキンケアと塗り薬を続けながら、体の内側から炎症を抑えるお薬を上乗せします。

かゆみ止めの飲み薬は、どの段階でも治療の「主役」ではありません。鼻炎やじんましんを合併している場合などに、補助的に使うお薬です。

良くなった後も塗り薬を続けて再燃を防ぐ「プロアクティブ療法」や、乳児期の湿疹が食物アレルギーなどにつながる「アトピーマーチ」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶ 子どものアトピー性皮膚炎とアトピーマーチ(当院コラム)

💉 塗り薬で良くならないとき──注射薬と飲み薬という選択肢

スキンケアと塗り薬による治療をきちんと続けても、強い炎症をともなう湿疹が広い範囲に残る中等症以上のお子さんには、体の内側から炎症を抑える「全身治療」という選択肢があります。以前は小さなお子さんが使える全身治療はごく限られていましたが、現在は国内で次のようなお薬が承認されています。

💉 注射薬(生物学的製剤)

2〜4週間ごとに皮下注射(お薬・体重により異なります)

デュピルマブ生後6か月以上
ネモリズマブ
アトピー性皮膚炎に伴うかゆみに使用
6歳以上
レブリキズマブ12歳以上かつ
体重40kg以上
トラロキヌマブ15歳以上

💊 飲み薬(JAK阻害薬)

1日1回の内服

バリシチニブ
錠剤が苦手なお子さん向けの液剤もあります(2026年7月〜)
2歳以上
ウパダシチニブ12歳以上かつ
体重30kg以上
アブロシチニブ12歳以上

※2026年10月時点の国内の承認内容をもとに作成しています。年齢・体重の条件に加えて、重症度やこれまでの治療経過などの条件を満たす必要があります。

注射薬(生物学的製剤)は、アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみに関わる物質の働きを、狙いを定めて抑えるお薬です。飲み薬(JAK阻害薬)は、炎症の信号を細胞の中で伝える「JAK」という酵素の働きを抑えるお薬で、かゆみや皮膚症状を比較的短い期間で改善させることが期待されます。なお、ここでいう飲み薬は、前半で紹介した抗ヒスタミン薬とはまったく別の種類のお薬です。

臨床試験では、皮膚症状だけでなく、かゆみや睡眠、生活の質の改善も報告されています。ただし、効果の出方には個人差があり、すべてのお子さんに同じ効果が得られるわけではありません。各お薬の特徴は、日本アレルギー学会が運営するアレルギーポータル「アトピー性皮膚炎とは」でも紹介されています。

どんなお子さんが対象になる?

これらのお薬は、国が定めた使用の目安(最適使用推進ガイドライン)に沿って使います。年齢・体重の条件に加えて、「塗り薬による適切な治療を一定期間続けても十分な効果が得られないこと」「湿疹の重症度や範囲が一定以上であること」などを診察で確認し、治療の対象となるかを判断します。

注射は2〜4週間ごと(お薬や体重によって異なります)、飲み薬は1日1回の内服が基本です。注射薬の中には、手技を練習したうえでご家庭で注射(自己注射)できるお薬もあります。お子さんの年齢や生活のリズム、注射が苦手かどうかなども含めて、ご家族と一緒に治療法を選びます。

📌 治療を始める前に知っておいていただきたいこと

  • お薬ごとに注意すべき副作用があります。注射薬では注射部位の赤み・腫れや結膜炎などの目の症状、飲み薬ではヘルペスなどの感染症、ニキビ、血液検査値の変化などが報告されています。
  • 飲み薬では、開始前に結核やB型肝炎などの感染症の検査を行い、治療中も定期的に血液検査を行います。
  • お薬によっては治療中に生ワクチンの接種を控える必要があるため、予防接種の予定もあわせて相談しながら進めます。
  • 全身治療を始めた後も、スキンケアと塗り薬は治療の基本として続けます。

💴 費用について──保険診療と広島市のこども医療費補助

ここで紹介した注射薬・飲み薬による治療は、条件を満たす場合に健康保険が適用される保険診療です。お薬の価格が高いため、通常の診察より医療費は高額になりますが、お子さんの場合は自治体の医療費助成により、窓口での負担が抑えられることがあります。

広島市にお住まいで「こども医療費受給者証」をお持ちの場合、医療機関の窓口でのお支払いは市が定める上限額までとなり、院外処方の保険薬局では自己負担がかかりません(上限額は、保護者の所得やお子さんの年齢などにより異なります)。さらに2027年1月診療分からは、対象が高校生年代まで広がり、所得制限もなくなります。新たに対象となるご家庭は申請が必要です。詳しくは広島市「こども医療費補助制度」をご確認ください。

広島市外にお住まいの方は、お住まいの市町の制度をご確認ください。治療の対象となるかどうかや費用の目安は、診察のうえで医師が個別にご説明します。

🏥 うじな家庭医療クリニックの小児アトピー性皮膚炎診療

当院では小児科として、乳児期の湿疹から思春期のアトピー性皮膚炎まで、成長に合わせて継続的に診療しています。注射薬(生物学的製剤)・飲み薬(JAK阻害薬)による全身治療についても、対象となるかの判断から導入、その後の経過観察まで院内で行っています。

  • 今の治療がお子さんの重症度に合っているかを、診察で評価します
  • 塗り薬の量や塗り方、保湿の方法を一緒に確認します
  • かゆみ止めの飲み薬を含め、続けるお薬と見直すお薬を整理します
  • 保護者の方の花粉症やぜんそくなど、ご家族のアレルギーのお悩みも内科でご相談いただけます

こんなときは、一度ご相談ください

☑ かゆみ止めの飲み薬を続けても、かゆみが治まらない
☑ 夜中にかきむしって、お子さんもご家族も眠れない
☑ 塗り薬で良くなっても、すぐにぶり返す
☑ ステロイドの塗り薬を使い続けることが不安
☑ 注射や飲み薬による治療について、話を聞いてみたい

受診の際は、次のものをお持ちいただくとスムーズです。

  • お薬手帳、または現在使っている塗り薬・飲み薬
  • 母子手帳(予防接種の記録を確認するため)
  • 症状がひどいときの写真(スマートフォンで撮影したもので構いません)
  • マイナ保険証などの保険情報と、こども医療費受給者証

宇品・元宇品・出島エリアをはじめ、南区にお住まいの方は、お子さんの肌のことでお困りでしたらお気軽にご相談ください。

まとめ

  • 2026年に発表された47の臨床試験の解析では、かゆみ止めの飲み薬をアトピー性皮膚炎の治療に追加しても、かゆみや皮膚症状の改善はわずかだったと報告されています。
  • かゆみを抑える基本は、スキンケアと塗り薬で皮膚の炎症をしっかり抑えることです。
  • 塗り薬で十分に良くならない中等症以上のお子さんには、生後6か月から使える注射薬や、2歳から使える飲み薬などの全身治療という選択肢があります。

参考文献・参考リンク

お子さんのアトピー性皮膚炎、
まずはご相談ください

関連する受診はまずは院長外来へ
院長診察日:火曜午前・水曜・木曜午後・金曜・土曜

ネットで予約する

TEL 082-256-4500

〒734-0003 広島県広島市南区宇品東6-2-47

監修:瀬尾卓司(がん薬物療法専門医・家庭医療専門医・総合診療指導医)

うじな家庭医療クリニック 院長。内科・小児科・がん薬物療法・在宅診療を通じて、お子さんからご高齢の方まで、ご家族の健康を継続して診療しています。