うじな家庭医療クリニックでは、2026年6月よりBRCA1/2遺伝子検査を開始します。乳がんや卵巣がんのなりやすさには、生まれ持った遺伝子の「体質」が関わることがあります。この記事では、検査でわかること・対象となる方・検査の流れについて、家庭医の視点からわかりやすくご説明します。
BRCA遺伝子検査とは
私たちは誰でも、BRCA1・BRCA2と呼ばれる遺伝子を持っています。これらは、細胞ががん化するのを防ぐ「ブレーキ」のような働きをする遺伝子です。生まれつきこの遺伝子に変化(病的バリアント)があると、乳がんや卵巣がんなどにかかりやすくなることが知られています。
BRCA遺伝子検査は、採血でこの遺伝子の変化の有無を調べる検査です。「がんになっているかどうか」を調べるものではなく、「なりやすい体質かどうか」を知るための検査です。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)とは
BRCA1/2遺伝子に病的バリアントがある状態を、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC:Hereditary Breast and Ovarian Cancer syndrome)と呼びます。HBOCの方は、一般の方と比べて乳がん・卵巣がんの発症リスクが高くなります。
また、HBOCは女性だけの問題ではありません。男性でも前立腺がんや膵がん、男性乳がんのリスクと関わることがあります。ご家族にがんが多い場合、ご自身の「体質」を知ることが、早期発見や予防の第一歩になります。
こんな方は検査を検討できます
次のような方は、検査をご検討いただける可能性があります。
- 若くして(45歳以下など)乳がんと診断された方
- トリプルネガティブ乳がんと診断された方
- 両側の乳がん、または複数回乳がんになった方
- 卵巣がん・卵管がん・腹膜がんと診断された方
- 男性で乳がんと診断された方
- ご家族(血縁者)に乳がん・卵巣がん・膵がん・前立腺がんの方がいる方
これらに当てはまる場合、保険診療で検査を受けられることがあります。当てはまらない場合も、自費で検査を受けることが可能です。対象になるかどうかは診察のうえで確認しますので、まずはご相談ください。遺伝性のがんや複数遺伝子を一度に調べる検査については、遺伝するがんと生殖細胞系列検査についての記事もあわせてご覧ください。
検査の流れ
- 診察・ご相談──検査の意義や、結果をどう受け止めるかについてご説明します。
- 遺伝カウンセリング──必要に応じて、専門的なカウンセリングをご案内します。
- 採血──検査自体は採血のみで、体への負担はほとんどありません。
- 結果説明──数週間後に結果をお伝えし、今後の方針を一緒に考えます。
検査でわかること・その後の選択肢
病的バリアントが見つかった場合でも、それは「必ずがんになる」という意味ではありません。わかるのは、あくまで「なりやすさ(リスク)」です。結果がわかると、次のような備えができます。
- 検診の強化(乳房MRIなど、より精度の高い定期検査)
- リスクを下げるための予防的手術(リスク低減乳房切除術・卵巣卵管摘出術)という選択肢
- ご家族(血縁者)への検査のご案内(くわしくは次の項目で)
これからは「ご家族(血縁者)」も保険で検査できます
これまでも、乳がんや卵巣がんと診断された患者さんご本人については、条件を満たせば保険診療でBRCA遺伝子検査を受けることができました。
これに加えて、HBOCと診断された方の血縁者(父母・子・きょうだい)も、保険診療で検査を受けられるようになります。ご自身はがんを経験していなくても、ご家族がHBOCと診断された場合には、同じ検査で「自分にも同じ体質が受け継がれているか」を調べられます。
さらに、血縁者が検査を受けてHBOCと診断された場合には、その後の予防的な手術(リスク低減乳房切除術・卵巣卵管摘出術)についても保険診療の対象となります。「ご本人だけ」から「ご家族みんなで体質を知り、一緒に備える」へと、仕組みが広がっています。
遺伝カウンセリングを大切にしています
遺伝子検査の結果は、ご本人だけでなくご家族にも関わるデリケートな情報です。当院では、検査を受けるかどうかを決める段階から、遺伝カウンセリングを大切にしています。
「受けること」も「受けないこと」も、どちらも尊重される選択です。不安なことや迷っていることがあれば、何でもご相談ください。
県立広島病院ゲノム診療科と連携して進めます
当院では、遺伝カウンセリングを県立広島病院のゲノム診療科と連携して行っていく予定です。「自分が検査の対象に当てはまるのか分からない」「家族にがんが多いが、どう考えればよいか不安」——そうした場合は、まず当院で適格基準を確認します。
そのうえで、専門的な遺伝カウンセリングや検査が必要と判断された場合には、県立広島病院ゲノム診療科へご紹介します。広島市南区・宇品エリアで身近にご相談いただける「入口」となり、専門科と連携して、相談・検査・その後のフォローを切れ目なくつなぐ役割を担います。
当院での検査について(2026年6月開始)
うじな家庭医療クリニックでは、2026年6月よりBRCA1/2遺伝子検査を開始します。「家族にがんが多くて心配」「自分が対象に当てはまるのか分からない」——そうしたお気持ちがあれば、まずは外来でお気軽にご相談ください。当院で適格基準を確認し、必要な場合は県立広島病院ゲノム診療科への紹介まで、責任をもってお手伝いします。膵がんなど他のがんの早期発見についてはこちらの記事もご参考ください。内科・がん薬物療法・在宅診療を行う家庭医として、検査の前後を通じて寄り添ってまいります。
うじな家庭医療クリニック 院長
内科・小児科・がん薬物療法・在宅診療
