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2026年に入り、麻疹(はしか)の患者報告数が全国的に急増しています。「子どもの病気」というイメージを持たれがちですが、今回の流行は15〜49歳の活動世代が感染者の約8割を占めているのが最大の特徴です。通勤・通学・商業施設での接触が多い世代での集団感染リスクが高まっており、広島県内でも注意が必要な状況です。
うじな家庭医療クリニックでは、MRワクチン(麻しん・風しん混合ワクチン)の任意接種に対応しています。本記事では、現在の流行状況、ご自身に免疫があるかどうかの確認方法、そして「抗体検査とワクチン接種、どちらを選ぶべきか」という実務的な判断について、医師の立場から詳しくお伝えします。
この記事のポイント
- 2026年の麻疹流行は2020年以降で最多ペース、感染者の83%が15〜49歳
- 1972年10月〜1990年4月生まれ(現在30代後半〜50代前半)は「ワクチン1回接種のみ」のリスク世代
- 抗体検査は5,000〜10,000円+結果待ち5〜7日、直接MR接種の方が合理的な場合が多い
- 当院のMRワクチンは9,900円(広島市内の中央値水準)
2026年の麻疹流行状況:全国で急増中
2020年以降で最多ペース、前年同時期の4.5倍
国立健康危機管理研究機構(JIHS)の感染症発生動向調査によると、2026年3月8日時点の全国累計感染者数は100人に達しました。これは前年同時期の22人と比較して4.5倍、2020年以降で最多のペースです。
2025年の年間感染者数が265人(パンデミック後の最多)であったことを踏まえると、2026年はそれを大きく上回る可能性があります。
地域別の発生状況(2026年3月中旬時点)
| 地域 | 累計感染者数 | 特記事項 |
|---|---|---|
| 東京都 | 34人 | すでに2025年1年間と同数 |
| 愛知県 | 18人 | 東三河地域の高校で集団感染(7人) |
| 神奈川県 | 10人 | 散発的発生 |
| 新潟県 | 10人 | 散発的発生 |
| その他 | — | 千葉県、群馬県、大阪府などでも報告あり |
広島県内での患者発生も散発的に報告されており、「自分の地域には関係ない」とは言えない状況です。特に広島市は観光客・出張者の往来が多く、南区宇品エリアも広島港からの人の流れがあるため、注意が必要です。
世界的にも深刻な状況
国際的な流行の拡大
- アメリカ:2025年の年間感染者数が麻疹排除宣言(2000年)以降で最多。ワクチン未接種の小児を含む死亡例も報告
- カナダ:2025年11月、27年間維持してきた麻疹排除認定を喪失
- 東南アジア:インドネシア、ベトナムなどで流行継続。日本への輸入症例の約半数がベトナムから
海外渡航の機会がある方は特に注意が必要です。
なぜ大人が狙われるのか:感染者の83%が15〜49歳
麻疹の感染力はインフルエンザの約10倍
麻疹ウイルスの基本再生産数(R0)は12〜18と推定されており、これは1人の感染者が12〜18人に感染を広げる可能性があるという意味です。インフルエンザの基本再生産数が1〜2程度であることを考えると、その感染力の強さは桁違いです。
麻疹は空気感染するため、同じ空間にいるだけで感染する可能性があります。マスクや手洗いだけでは予防できません。免疫を持たない人が感染すると、ほぼ100%発症すると言われています。
感染者の年齢分布(2026年第1〜10週)
| 年齢層 | 割合 | 特徴 |
|---|---|---|
| 15〜19歳 | 20% | 高校・大学での集団感染リスク |
| 20〜29歳 | 29% | 感染者中最多、就労世代 |
| 30〜39歳 | 16% | 育児世代、職場感染 |
| 40〜49歳 | 18% | 管理職世代、出張リスク |
| 15〜49歳合計 | 83% | — |
なぜこの世代が感染しやすいのか
この世代の多くは「麻疹ワクチン1回接種世代」または「接種歴不明世代」に該当します。1回接種では約5%の人に免疫がつかず、さらに時間経過で抗体価が低下している可能性があります。自然感染の機会も少なかった世代のため、免疫の「空白」が生まれているのです。
ご自身の麻疹免疫はどうなっている?生年別チェック
ご自身がどの接種パターンに該当するか、生年月日で確認できます。
| 生年 | 接種パターン | リスク評価 |
|---|---|---|
| 1972年9月以前生まれ (2026年時点で53歳以上) |
定期接種なし。多くが自然感染で免疫あり | 比較的低リスク |
| 1972年10月〜1990年4月1日生まれ (2026年時点で36〜53歳) |
1回接種のみ(5%は免疫不成立) | ハイリスク |
| 1990年4月2日〜2000年4月1日生まれ (2026年時点で26〜36歳) |
1回接種世代(接種率低迷期あり) | 中リスク |
| 2000年4月2日以降生まれ (2026年時点で26歳未満) |
2回接種が標準(2006年4月から定期化) | 比較的低リスク |
特に注意が必要な方
2026年の感染者データでは、ワクチン2回接種未完了者が約79%を占めています。母子手帳でご自身の接種歴を確認できない方、1回接種のみの方は、追加接種の検討をお勧めします。
「抗体検査」か「直接接種」か:医師の立場からの判断
「免疫があるか心配なので、まず抗体検査で確認したい」というご相談をよくいただきます。しかし、現在の状況下では、多くの方にとって「抗体検査を挟まず、直接MR接種を受ける」方が合理的です。その理由をご説明します。
コスト・時間の比較
| 選択肢 | 費用 | 所要時間 | その後の対応 |
|---|---|---|---|
| 抗体検査のみ | 5,000〜10,000円(自費) | 結果まで5〜7日 | 陰性なら別途ワクチン接種が必要 |
| 抗体検査→陰性→接種 | 約15,000〜20,000円 | 合計2週間程度 | 完了 |
| 直接MR接種 | 9,900円 | 即日完了 | 完了 |
直接接種が合理的な理由
- 既に免疫がある人が追加接種しても安全性に問題なし:CDC、WHO、日本環境感染学会「医療関係者のためのワクチンガイドライン」も、接種歴不明者への直接接種を認めています。ブースター効果が得られるか、中和抗体により不活化されるだけで、臨床的な問題はほぼありません。
- 抗体検査の感度には限界がある:EIA法のIgG抗体価は細胞性免疫を反映せず、「検査陰性=免疫なし」「検査陽性=完全防御」と単純化できない曖昧さがあります。
- 流行期のリードタイム:抗体検査の結果を待つ5〜7日の間に曝露するリスクがあります。
- 経済的合理性:検査→接種のルートより直接接種の方が、費用・時間ともに効率的です。
抗体検査を先に行うべきケース
以下に該当する方は、まずご相談ください
- 妊娠中の方:MRは生ワクチンのため接種不可。抗体検査で確認し、必要に応じて産後接種を計画します
- 妊娠の可能性がある方・妊娠希望の方:接種後2ヶ月の避妊が必要となります
- 免疫抑制状態の方:抗がん剤治療中、ステロイド大量投与中など、生ワクチン禁忌の方
- 過去にMRワクチンでアレルギー反応があった方
広島市内のMRワクチン料金比較
当院のMRワクチン料金が、広島市内の他院と比較してどのような位置にあるかをご参考までにお示しします。
| 医療機関 | 所在地 | MRワクチン料金(税込) |
|---|---|---|
| うじな家庭医療クリニック | 広島市南区宇品 | 9,900円 |
| A内科小児科医院 | 広島市安佐南区 | 9,200円 |
| B内科クリニック | 広島市安佐南区 | 11,000円 |
※2026年4月時点、各院公式サイト掲載情報より。全国的な任意接種の相場は8,000〜12,000円のレンジで、広島市内もこの範囲内にあります。
うじな家庭医療クリニックのMRワクチン任意接種
9,900円(税込)総合内科・家庭医療専門医による接種前カウンセリング込み
当院でのMRワクチン接種の流れ
- お電話でご予約:082-256-4500(ワクチンの在庫状況を確認のうえ、接種日を決定します)
- 来院・問診:母子手帳をお持ちの方はご持参ください。接種歴・既往歴・妊娠の可能性などを確認します
- 医師による接種可否判断:総合内科・家庭医療専門医が接種の適応を判断します
- 接種:問題がなければ当日接種可能です
- 経過観察:院内で15〜30分経過観察の後、ご帰宅
ワクチン供給状況について
現在、全国的にMRワクチンの供給が不安定な状況が続いています。2024年のMRワクチン品質問題による自主回収以降、供給逼迫が続いており、厚生労働省は定期接種対象者への特例措置として接種期間を令和9年(2027年)3月31日まで2年間延長しています。
当院でも在庫数に限りがあるため、接種をご希望の方はお早めにご連絡ください。ご予約時に在庫状況をお伝えします。
よくあるご質問
市区町村によっては定期接種の記録が保管されている場合があります(保管期間に限りあり)。確認が難しい場合は、接種歴不明として扱い、直接MRワクチン接種を受けることをお勧めします。前述の通り、既に免疫がある方が追加接種しても安全性に問題はありません。
発症予防に必要な免疫獲得までに約2週間かかります。渡航予定の4週間前までに接種を済ませることをお勧めします。流行地域(東南アジア、北米など)への渡航前は特に重要です。
成人で過去に1回も接種していない方は、原則2回接種(4週間以上あけて)が推奨されます。1回接種歴がある方は、追加1回で合計2回となります。ただし、個別の状況により判断が異なりますので、診察時にご相談ください。
MRワクチンの主な副反応は、接種部位の発赤・腫脹(10〜20%)、発熱(5〜10%、接種後1〜2週間後)、発疹(数%)などです。重篤な副反応は極めてまれです。接種後30分程度は院内で経過観察を行います。
MRワクチンは在庫管理の都合上、事前予約制とさせていただいています。お電話(082-256-4500)で在庫状況をご確認のうえ、接種日をご予約ください。
まとめ:麻疹流行期にこそ、適切な予防を
- 2026年の麻疹流行は感染者の83%が15〜49歳、大人こそが注意すべき状況です
- 1972年10月〜1990年4月生まれの「1回接種世代」は特にハイリスクです
- 抗体検査を挟まず、直接MR接種を受ける方が、多くの方にとって合理的です
- ただし妊娠中・妊娠希望・免疫抑制状態の方は、事前にご相談ください
- 当院のMRワクチン料金は9,900円(税込)、広島市内の中央値水準です
ご不安な方、接種歴が不明な方、ご家族の海外渡航を控えている方は、どうぞお気軽にご相談ください。うじな家庭医療クリニックは、広島市南区宇品で皆さまの予防医療をサポートします。
うじな家庭医療クリニック
〒734-0003 広島県広島市南区宇品東6丁目2-47
TEL:082-256-4500
診療内容:一般外来診療 / 在宅医療 / 救急対応 / がんサバイバーシップ外来 / 外来化学療法 / 各種予防接種
MRワクチン接種ご希望の方はお電話でご予約ください
監修者
瀬尾 卓司(せお たくじ)
うじな家庭医療クリニック 院長
総合内科専門医・がん薬物療法専門医・家庭医療専門医
国立がん研究センター中央病院での勤務を経て、2024年にうじな家庭医療クリニックを開設。広島市南区宇品において、外来診療・在宅医療・救急対応の3本柱で地域医療を提供しています。がんサバイバーシップ外来も担当。