医療コラム

  1. HOME
  2. 医療コラム
 

COLUMN医療コラム

広島市南区宇品のクリニックが「救急車403台」を受けた1年半 ― 日本プライマリ・ケア連合学会で発表しました|うじな家庭医療クリニック

2026年5月30日、京都で開かれた第17回 日本プライマリ・ケア連合学会 学術大会(JPCA2026)で、当院院長の瀬尾卓司が「無床診療所が地域救急を受ける意義」と題して発表を行いました。開院から1年6か月で受け入れた403台の救急搬送を分析した内容を、地域の皆さまにもわかりやすい形でご報告します。

当院は広島市南区宇品で、内科・小児科・がん薬物療法・在宅診療を行うクリニックです。2024年7月から救急車の受け入れを始め、今回はその実績を全国の医師の前で報告してきました。

なぜ「街のクリニック」が救急車を受けるのか

近年、「救急車を呼んでも搬送先が決まらない」という搬送困難のニュースを耳にすることが増えました。高齢化が進むなかで救急の件数は増え続け、特に冬場は大きな病院の救急に負担が集中しています。

一方で、救急で運ばれる方のすべてが入院や手術を必要とするわけではありません。発熱、転倒によるけが、脱水など、適切に診ることができればその日のうちにご自宅へ帰れる方も多くいらっしゃいます。こうした比較的軽い救急(一次救急)を地域のクリニックが受け止めることで、大きな病院は重症の患者さんに集中でき、地域全体の医療を守ることにつながります。

当院はCT(造影対応)や超音波、各種血液検査をそなえ、家庭医療・総合診療を専門とする医師が在籍しています。「断らずに、まず診る」という姿勢で、2024年7月から救急車の受け入れを続けてきました。

1年半で403台 ― 発表でお伝えした主な結果

受け入れ件数は約1.4倍に増加

403
1年6か月の総受け入れ
139264
年度別の件数(約1.4倍)
約77%
当日ご帰宅の割合

開院初年度(令和6年度)の救急車受け入れは139件、月平均15.4件でした。これが翌年度(令和7年度)には264件、月平均22.0件へと、約1.4倍に増えました。地域の救急隊の皆さまに「ここなら受けてくれる」と認識していただけたことの表れだと考えています。

広島市内のほぼ全域から来院

搬送の要請場所を調べると、当院のある南区が254件(63.0%)と最も多く、続いて中区、西区、安芸区と、広島市8区すべてに加えて安芸郡・廿日市・呉・東広島・江田島からの搬送がありました。特に当院から半径約2km圏内の近接する消防分隊からの依頼が大きく伸びており、宇品で3.4倍、大手町で4.4倍に増加しています。

約77%の方がその日のうちにご帰宅

搬送理由でもっとも多かったのは外傷・転倒(交通事故によるけがを含む/36.0%)、次いで脱力やめまいなどの神経・意識症状(26.6%)、発熱(7.7%)でした。診断は多岐にわたりましたが軽症が中心で、約77%の方が当院での診療を終えてご自宅へ帰ることができました。入院や手術が必要と判断した約20%の方は、提携する大きな病院へ速やかにお引き継ぎしています。

救急は「終わり」ではなく「始まり」

今回の発表で私たちがもっとも強調したのは、救急で出会った患者さんが、その後の継続的な医療につながっていくという点です。

たとえば、救急で運ばれてきた肺炎や尿路感染症の方が、そのまま当院の在宅医療(訪問診療)へと移行したケースが複数ありました。入院せず、住み慣れたご自宅で点滴などの治療を受ける「Hospital At Home(在宅入院)」という考え方です。また、これまでかかりつけ医を持っていなかった方が、救急をきっかけに当院や他院での定期的な通院につながった例も多くありました。

救急の現場は、その場で治療を完結させるだけでなく、在宅医療・外来通院・他院との連携への「入り口」として機能している。これが403例の分析からはっきりと見えてきたことです。

「つながる」ことが地域医療を支える

件数が約2倍に増えたにもかかわらず、ご帰宅いただける割合はむしろ上がりました。これは、救急隊・大きな病院・在宅医療という3つの方向との「つながり」が1年半をかけて育ったためだと考えています。

顔の見える関係ができたことで、救急隊からは適切な振り分けの相談が、病院とはスムーズな紹介が、そして地域の介護・福祉とは在宅への橋渡しが、それぞれ円滑になりました。2040年に向けて高齢化がさらに進むなかで、地域で救急を受け止められるクリニックの役割は、ますます大きくなっていくと私たちは考えています。

当院はこれからも「断らずに、まず診る」を続け、地域の皆さまの安心を支える存在でありたいと願っています。体調の急な変化や、ご家族の在宅でのケアについてのご相談も、内科・小児科・在宅診療で承っています。気になることがあればお気軽にご相談ください。

学びを止めない ― スタッフの学会・研修参加を補助しています

医師も、看護師も、事務員も。みんなで学び続けるクリニックです

今回のような学会発表は、日々の診療を見つめ直し、よりよい医療へとつなげる大切な機会です。当院では医師だけでなく、看護師・事務スタッフの学会や研修会への参加を、補助制度つきで積極的に推奨しています。職種を問わず学びを応援する文化が、チーム全体の力を育て、患者さんへのより質の高いケアにつながると考えています。

「地域医療の最前線で、学びながら働きたい」という方を、当院はいつでも歓迎しています。医師・看護師・薬剤師・栄養士・事務など、一緒に働いてくださる仲間を募集中です。ご興味のある方は、採用情報ページまたはお電話(082-256-4500)までお気軽にお問い合わせください。

監修:瀬尾卓司(がん薬物療法専門医・家庭医療専門医)

うじな家庭医療クリニック 院長。家庭医療専門医・がん薬物療法専門医・総合診療指導医。広島市南区宇品にて、内科・小児科・がん薬物療法・在宅診療を行う。「断らずに、まず診る」を掲げ、地域の一次救急と在宅医療に取り組んでいる。

うじな家庭医療クリニック
〒734-0003 広島県広島市南区宇品東6-2-47/TEL:082-256-4500
診療科目:内科・小児科・がん薬物療法・在宅診療