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「うちの子、寝ているときにすごくいびきをかくんです」——診察室でそうお話しされる保護者の方は、決して少なくありません。いびきは「ぐっすり眠れている証拠」と受け取られがちですが、お子さまの場合、それが睡眠時無呼吸のサインであることがあります。
夏休みは生活リズムが変わり、お子さまの寝顔をゆっくり見る機会が増える時期でもあります。新学期を迎える前に、一度お子さまの睡眠を見直してみませんか。この記事では、受診の目安と、当院での検査・ご紹介の流れをご説明します。
😴 その「いびき」、よく眠れているサインとは限りません
小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、睡眠中に空気の通り道である上気道が狭くなったりふさがったりして、呼吸が止まる・浅くなることを繰り返す状態です。お子さまの場合、最も多い原因はアデノイドや扁桃(へんとう)の肥大で、そのほか肥満、アレルギー性鼻炎による慢性的な鼻づまりなども関係します。
大人との違い
大人の睡眠時無呼吸では日中の強い眠気が代表的な症状ですが、お子さまの場合は眠気としてではなく、落ち着きのなさ・イライラ・集中力の低下といった形であらわれることがあります。「よく寝ているのに、日中の様子が気になる」という場合こそ、睡眠を見直す価値があります。
🔍 受診をおすすめする目安
次のような様子がみられる場合は、一度ご相談ください。特に「いびきがほぼ毎晩ある」ことは、重要な手がかりになります。
⚠️ チェックリスト(夜間の様子)
- ほぼ毎晩いびきをかいている
- 息が止まっているように見える瞬間がある
- あえぐような呼吸、息が詰まるような音がある
- 胸やお腹が大きくへこむ、苦しそうな呼吸をしている
- あごを突き出す、上を向くなど、変わった姿勢で寝ている
- 寝汗がとても多い
- いったんおむつが外れたのに、夜のおねしょが再び始まった/増えた
- 寝返りが激しく、何度も目を覚ます
⚠️ チェックリスト(日中の様子)
- 日中に強い眠気がある、朝に頭痛を訴える
- 落ち着きがない、注意が続かない、イライラしやすい
- 園や学校での様子、学業成績に変化がある
- 日中も口をぽかんと開けていることが多い
※これらはあくまで受診を検討する目安です。当てはまる項目があっても睡眠時無呼吸とは限りませんし、逆に当てはまらなくても心配な点があればご相談いただいて構いません。
⚠️ 見過ごされたときに心配される影響
小児の睡眠時無呼吸は、夜間の症状だけにとどまりません。米国小児科学会(AAP)の診療ガイドラインなどでは、次のような領域への影響が指摘されています。
こころと学びの面
睡眠が繰り返し分断され、血液中の酸素が下がる状態が慢性的に続くことで、注意力や記憶、物事を計画して実行する力への影響が報告されています。多動や易刺激性など、いわゆるADHDに似た様子としてあらわれることもあり、睡眠の問題が背景にあると気づかれにくい点が課題です。不安や気分の落ち込みとの関連も指摘されています。
心臓と血管の面
米国心臓協会(AHA)の科学的声明では、小児の睡眠時無呼吸と高血圧、夜間に血圧が十分下がらないパターン、心臓の壁が厚くなる変化などとの関連が示されています。重症例では肺の血管の圧が上がることもあります。「子どもに高血圧」と聞くと意外に感じられるかもしれませんが、睡眠中の呼吸の状態は循環器に負担をかけうるのです。
成長と代謝の面
重症の場合、体重が思うように増えないことがあります。呼吸に余分なエネルギーを使うことや、成長ホルモンの分泌への影響が関わると考えられています。一方で肥満のあるお子さまでは、睡眠時無呼吸がインスリンの効きにくさや脂質の異常をさらに悪くしうるという、互いに影響し合う関係も報告されています。
一般に、重症であるほど、また気づかれないまま時間が経つほど、これらのリスクは高くなる傾向があるとされています。逆に言えば、早めに気づいて評価につなげることに意味があります。
🧒 起こりやすいお子さんの特徴
- アデノイド・扁桃が大きいお子さま(最も多い原因です)
- 肥満のあるお子さま
- アレルギー性鼻炎などで慢性的に鼻がつまっているお子さま
- ダウン症候群、頭やあごの形に特徴のある疾患をお持ちのお子さま
- 筋力に影響のある神経・筋の疾患をお持ちのお子さま
また、長期間にわたって口呼吸が続くと、上あごが狭くなる、前歯がかみ合わない、顔が縦に長くなるといった顔つきの変化(アデノイド様顔貌)につながることがあります。歯科での矯正相談をきっかけに、睡眠の問題が見つかることもあります。
関連コラム:[内部リンクURL:小児のアレルギー性鼻炎について]
🏥 当院での検査と、専門医療機関へのご紹介
睡眠時無呼吸の診断には、睡眠中の呼吸や酸素の状態を実際に記録する検査が必要です。問診と診察だけでは、無呼吸があるかどうか・どの程度かを正確に判断することはできないことが分かっているためです。当院では年齢に応じて、次のように対応しています。
15歳以上の方
当院ではまずご自宅でできる簡易検査で評価を行います。指や鼻に小型のセンサーをつけて普段どおりお休みいただき、睡眠中の呼吸や血液中の酸素の状態を記録する検査です。その結果、より詳しい評価が必要と判断された場合には、精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査:PSG)へ進みます。18歳以上の方は当院で治療・経過観察を継続します。15〜17歳の方で治療が必要と判断された場合は、思春期特有の配慮が必要なため、小児科の専門医療機関へご紹介いたします。
15歳未満のお子さま
当院で問診・診察を行い、症状や所見から睡眠時無呼吸が疑われる場合には、小児の睡眠検査に対応できる地域の専門医療機関へご紹介いたします。お子さまの睡眠検査は、大人と同じ在宅の簡易な方法では正確に評価できないことが分かっており、小児に対応した設備と体制のもとで行うことが望ましいとされているためです。
アデノイド・扁桃の肥大が原因と考えられる場合、アデノイド扁桃摘出術が治療の第一選択とされています。手術を行わない場合や、手術後も症状が残る場合には、CPAP(シーパップ/持続陽圧呼吸療法)という機器を用いた治療が検討されます。過体重・肥満を伴う場合には、あわせて体重管理に取り組むことがすすめられています。
なお、手術を受けた後も症状が残るお子さまは一定の割合でおられ、治療後にきちんと経過をみていくことが大切です。当院はかかりつけ医として、専門医療機関での治療後も、日々の体調管理や成長の見守りを継続してサポートいたします。
関連コラム:[内部リンクURL:大人の睡眠時無呼吸症候群と検査について]
🌙 ご家庭で気をつけていただきたいこと
- 年齢に見合った睡眠時間を確保する——夏休み明けに向けて、就寝・起床時刻を少しずつ整えていきましょう
- 鼻づまりを放置しない——アレルギー性鼻炎などがある場合は、そちらの管理も睡眠の質に関わります
- 体重が気になる場合は無理のない範囲で見直す——極端な食事制限ではなく、生活全体のバランスから
- 寝ている様子を短い動画で記録しておく——受診時に大変参考になります(呼吸音が入るように撮影してください)
受診時のおすすめ
スマートフォンで撮影した10〜20秒程度の睡眠中の動画があると、いびきの様子や呼吸の状態を実際に確認でき、診察がより正確になります。無理のない範囲でご用意ください。
📍 宇品・元宇品・出島エリアでお子さまの睡眠が気になる方へ
「病院に行くほどではないかもしれない」と迷われている段階でも構いません。お子さまのいびきや睡眠の様子について、まずはかかりつけ医にご相談ください。専門的な検査が必要かどうかの見極めと、必要な場合の適切な医療機関へのお橋渡しが、私たちの役割です。
当院は宇品東にあり、宇品・元宇品・出島エリアの皆さまに、内科・小児科・がん薬物療法・在宅診療を提供しています。ご家族そろってご相談いただけます。
うじな家庭医療クリニック
〒734-0003 広島県広島市南区宇品東6-2-47
TEL:082-256-4500
診療科目:内科・小児科・がん薬物療法・在宅診療
参考情報
監修
瀬尾 卓司(せお たくじ)
家庭医療専門医・がん薬物療法専門医・総合診療指導医
うじな家庭医療クリニック 院長
広島市南区宇品東6-2-47/TEL:082-256-4500