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「健康診断で肝臓の数値を指摘された」「量を減らしたいのに、つい飲みすぎてしまう」——そんなお悩みはありませんか。お酒との付き合い方を見直す方法は、きっぱりやめる「断酒」だけではありません。まず量を減らす「減酒(げんしゅ)」という考え方があり、2019年からは飲酒量を減らすための飲み薬も国内で使えるようになりました。
この記事では、まずご自身が飲んでいるお酒の量を「純アルコール量(g)」で知る方法を、ビールや日本酒、チューハイに置き換えて紹介します。そのうえで、減酒の飲み薬の効果と注意点を、臨床試験の数字を「お酒の量」に置き換えて解説します。
この記事のポイント
- お酒の量は「純アルコール量(g)」で比べます。ものさしはビール中瓶1本(500mL)=20g
- 1日あたり男性40g・女性20g以上の飲酒は「生活習慣病のリスクを高める量」とされています(厚生労働省)
- アルコール依存症と診断され、男性60g・女性40gを超える飲酒が習慣になっている方は、減酒の飲み薬の対象になることがあります
- 飲み薬は「飲む1〜2時間前」に服用し、飲酒の記録や面談とセットで使います
お酒の量は「純アルコール量(g)」で数えます
同じ「1杯」でも、ビールと日本酒、ストロング系チューハイでは、体に入るアルコールの量が大きく違います。そこで目安になるのが、お酒に含まれるアルコールそのものの重さ=純アルコール量(g)です。厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」でも、お酒の量(mL)だけでなく、純アルコール量に着目することが大切だとされています。
純アルコール量の計算式
お酒の量(mL)× 度数(%)÷ 100 × 0.8
※0.8はアルコールの比重です
例)ビール中瓶 500mL(5%):500 × 5 ÷ 100 × 0.8 = 20g
主なお酒の純アルコール量(目安)
この記事では、ビール中瓶(500mL)1本=20gを「ものさし」にしていきます。
| お酒(度数) | 量 | 純アルコール |
|---|---|---|
| ビール(5%) | 350mL缶 | 14g 中瓶 約0.7本分 |
| ビール(5%) | 中瓶・ロング缶 500mL | 20g =ものさし |
| 日本酒(15%) | 1合 180mL | 約22g 中瓶 約1.1本分 |
| ワイン(12%) | グラス1杯 120mL | 約12g 中瓶 約0.6本分 |
| 焼酎(25%) | 100mL(割る前の量) | 20g 中瓶 1本分 |
| ウイスキー(40%) | ダブル 60mL | 約19g 中瓶 約1本分 |
| チューハイ・ハイボール缶(7%) | 350mL缶 | 約20g 中瓶 約1本分 |
| ストロング系チューハイ(9%) | 350mL缶 | 約25g 中瓶 約1.3本分 |
| ストロング系チューハイ(9%) | 500mL缶 | 36g 中瓶 約1.8本分 |
※度数は商品によって異なります。実際の量は、缶やラベルに書かれた度数で計算してください。
見落としがちなのがストロング系チューハイです。500mL缶1本で36g、2本飲むと72gとなり、ビール中瓶3本分(60g)を超えます。
どこからが「飲みすぎ」? 知っておきたい3つの目安
1日あたりの純アルコール量について、次のような目安があります。ただし、いずれも「ここまでなら安全」という意味ではありません。厚生労働省も、①の量は個々人の許容量を示したものではないとしています。
| 1日あたりの目安 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| ① 生活習慣病のリスクを高める量 厚生労働省(健康日本21) |
40g以上 中瓶2本 |
20g以上 中瓶1本 |
| ② 「高リスク」の飲酒 WHOの飲酒リスクレベル。臨床試験では、この量を超えて飲んだ日を「多量飲酒日」と数えます |
60g超 中瓶3本超 |
40g超 中瓶2本超 |
| ③ 「非常に高リスク」の飲酒 WHOの飲酒リスクレベル |
100g超 中瓶5本超 |
60g超 中瓶3本超 |
また、飲む量が少なければリスクがゼロになるわけではありません。厚生労働省のガイドラインでは、高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中などは少量の飲酒でも発症リスクが上がり、大腸がんは1日約20g(週150g)以上の飲酒でリスクが上がるとされています。女性や高齢の方、お酒を飲むと顔が赤くなる体質の方は、アルコールの影響を受けやすいことも知られています。
📝 計算してみましょう
例)晩酌で「ビール350mL缶を1本」飲んだあと、「ストロング系チューハイ500mL缶を1本」
14g + 36g = 50g(ビール中瓶2.5本分)
男性では①の目安(40g)を超え、女性では②の目安(40g超)にあたります。これを週5日続けると、1週間で250g。ビール中瓶にして12.5本分です。
「断酒」だけじゃない。「減酒」という選択肢
アルコール依存症の治療では、お酒を完全にやめる断酒が原則の目標です。一方で、「いきなりゼロにするのは無理」と感じて、受診をためらう方も少なくありません。
そこで、2018年に作成された国内の診断治療ガイドラインでは、飲酒量を減らす減酒(飲酒量低減)も治療目標の一つとして位置づけられました。まず量を減らして体と生活を立て直し、状況に応じて断酒に切り替えることもあります。
次のような場合は、断酒を目標に考えます
- 幻覚やけいれんなど、すぐに治療が必要な離脱症状(お酒が切れたときの症状)が出ている
- 肝硬変など、飲酒による重い病気がある
- 妊娠中・授乳中である
どちらを目標にするかは、体の状態やご本人の希望をうかがいながら、一緒に決めていきます。
飲酒量を減らす飲み薬「ナルメフェン」とは
ナルメフェン(一般名)は、2019年に国内で承認された、アルコール依存症の方の飲酒量を減らすための飲み薬です。脳内のオピオイド受容体に作用して、飲酒量を減らすと考えられています(くわしい仕組みは、まだ十分にはわかっていません)。健康保険が使えるお薬です。
💊 飲み方の特徴
- 「今日は飲みそうだ」と思う日に、飲酒の1〜2時間前に服用します(1日1回まで)
- 毎日決まって飲む薬ではなく、飲酒する日だけ使う「頓用(とんよう)」のお薬です
- 飲み忘れたまま飲酒を始めたときは、気づいた時点ですぐに服用します。飲み終わった後には服用しません
- 通常は1回1錠です。状態に応じて、医師が量を調整することがあります
対象になる方
添付文書では、次のような方に使うこととされています。
- 医師の診察でアルコール依存症と診断されている
- 1日平均で男性60g超・女性40g超(男性はビール中瓶3本超、女性は2本超)の飲酒が習慣になっている
- ご本人に、飲酒量を減らす治療に取り組む意思がある
また、このお薬は単独で使うものではありません。飲酒の記録(飲酒日記)や目標づくり、定期的な面談といった心理社会的治療と組み合わせて使うことが前提です。処方は、アルコール依存症の治療について十分な知識・経験をもつ医師のもとで行うこととされています。
どのくらい減る? 試験の結果を「お酒の量」に置き換えると
国内の臨床試験(24週間)
日本人のアルコール依存症の方677人を対象に、飲み薬またはプラセボ(有効成分を含まない偽薬)を、面談による心理社会的治療と組み合わせて24週間使った試験があります。参加者は試験前、1か月あたり約23日が「多量飲酒日」(男性60g超・女性40g超を飲んだ日)という状態でした。
12週時点で、1か月あたりの多量飲酒日数は次のように変わりました(飲み薬は通常量のグループ)。
試験開始時
プラセボ + 面談(12週)
飲み薬 + 面談(12週)
※国内第Ⅲ相試験の12週時点。試験開始時の平均から、変化量の平均を差し引いた概算です。
どちらのグループも大きく減っていますが、飲み薬のグループのほうが、多量飲酒日が月に約4日多く減りました。
1日あたりの飲酒量で比べると
プラセボより 約13g 多く減少
= 缶ビール(350mL)約1本分/日
※平均値の差です。効果には個人差があります
※国内第Ⅲ相試験の12週時点(プラセボとの差 約12.9g/日)。1日あたりの飲酒量は、飲み薬のグループで約45g(ビール中瓶2本強)、プラセボのグループでも約32g(中瓶1.6本分)減っていました。
海外の臨床試験でも
欧州で行われた2つの臨床試験(6か月間)を、多量の飲酒が続いていた方に絞ってまとめた解析でも、プラセボと比べて多量飲酒日は月に約3日少なく、1日あたりの飲酒量は約14g(缶ビール350mL約1本分)少なかったと報告されています。1年間続けた試験でも、同様の方々でプラセボより飲酒量が少なかったと報告されています。
💡 ここがポイント
プラセボのグループでも、飲酒量はかなり減っています。試験に参加して記録や面談を続けること自体が、飲酒量を減らす助けになった可能性があります。飲み薬は、その取り組みに「上乗せ」するものと考えるとイメージしやすいでしょう。
知っておきたい限界
- 効果の大きさは「控えめ」とする評価もあります。複数の試験をまとめた解析(2015年)では、6か月時点の多量飲酒日の差は月に約1.7日でした
- 海外の試験で効果がよりはっきり示されたのは、多量の飲酒が続いていた方に、試験の後から対象を絞り込んだ解析(事後解析)です
- 副作用で治療を中止する人は、プラセボより多いと報告されています
- 飲酒量が減ることで、病気や死亡が減るかどうかまでは、まだ十分に確かめられていません
- 国内の臨床試験では、1年を超えて使った経験がありません。続けるかどうかは、定期的に見直します
主な副作用と、使えない・注意が必要な場合
国内の臨床試験(通常量のグループ)でみられた主な副作用は、次のとおりです。
| 吐き気 | 31.0%(約3人に1人) |
| めまい | 10.9% |
| 頭痛 | 9.8% |
| 眠気 | 9.2% |
| 不眠 | 7.1% |
多くは軽度から中等度と報告されていますが、めまいや眠気、注意力の低下が起こることがあります。服用中は、車の運転など危険を伴う作業に注意してください。
⚠️ 使えない・注意が必要な場合
- 医療用麻薬やトラマドールなど、オピオイド系の痛み止めを使っている方(中止して1週間以内を含む)は使えません。がんの痛みの治療中の方などは、必ずお知らせください
- 一部の咳止め(コデイン類)や下痢止め(ロペラミド)は、効き目が弱まることがあります
- 手術などでオピオイド系の薬を使う予定がある場合は、少なくとも1週間前に服用を中止します。服用中であることを、医師・歯科医師に必ず伝えてください
- 肝臓や腎臓の働きが低下している方は、量に注意が必要です
- 因果関係ははっきりしていませんが、気分の落ち込みや、自殺を考えてしまうほどのつらい気持ちが報告されています。気分の変化があれば、すぐにご相談ください
今日からできる減酒の工夫
お薬を使うかどうかにかかわらず、次のような工夫が役立ちます。厚生労働省のガイドラインで紹介されている方法も含まれています。
- ✅ 飲んだ量を記録する:何を何本飲んだかをメモして、純アルコール量(g)に換算してみましょう
- ✅ 飲む前に上限を決める:「今日は中瓶1本(20g)まで」など、あらかじめ決めておきます
- ✅ 飲まない日をつくる:1週間のうちに飲酒しない日を設け、毎日続けて飲まないようにします
- ✅ 度数の低いものに替える:同じ350mL缶でも、ストロング系(9%)の約25gから、5%の缶なら14gに減ります
- ✅ 食べながら、水と交互に:空腹で飲まず、合間に水や炭酸水をはさみます
- ✅ 寝酒をやめる:眠るためのお酒は、かえって睡眠を乱し、依存のリスクを高めるとされています
- ✅ 買い置きをしない:手の届くところにあると、つい量が増えてしまいます
こんなときは、ご相談ください
- ☑ 健康診断で、肝機能(γ-GTPなど)や血圧、中性脂肪の異常を指摘された
- ☑ 減らそうと思っても、つい予定より多く飲んでしまう
- ☑ お酒がないと眠れない、イライラする
- ☑ 家族や職場の人から、お酒のことを心配されている
- ☑ 朝から飲みたくなる、お酒が切れると手がふるえる・汗が出る
最後の項目にあてはまる方は、自己判断で急にお酒をやめると、離脱症状が強く出ることがあります。まずは医療機関にご相談ください。
ご家族の飲酒で悩んでいる方は、広島市精神保健福祉センターの依存症相談窓口で、ご家族だけでも電話や面接で相談できます(対象や受付時間はリンク先でご確認ください)。
当院でのご相談について
当院では、院長外来で飲酒のご相談をお受けしています。院長は、日本アルコール・アディクション医学会と日本肝臓学会が主催する「アルコール依存症の診断と治療に関するe-ラーニング研修」を修了しています。高血圧や糖尿病、がんの治療など、持病の診療とあわせて相談できるのは、かかりつけ医で取り組む利点のひとつです。
飲んでいるお酒の種類・量・頻度をうかがい、1日あたりの純アルコール量を一緒に計算します
健診結果や血液検査で、肝臓などの状態を確認します
断酒か減酒か、1日何gまでにするかなど、無理のない目標を一緒に決めます
飲酒の記録をもとに定期的に振り返り、必要に応じて飲み薬の使用を検討します
離脱症状が強い場合や、専門的な治療が必要と考えられる場合は、専門の医療機関と連携します。お薬を使えるかどうかは、飲酒の状況や持病、服用中のお薬を確認したうえで、医師が判断します。
まとめ
お酒との付き合い方を見直す第一歩は、飲んでいる量を「純アルコール量(g)」で知ることです。ビール中瓶1本=20gを目安に計算すると、思っていたより多く飲んでいたと気づく方も少なくありません。減酒の飲み薬は、記録や面談と組み合わせることで、飲酒量を減らす助けになる可能性が報告されています。「やめる」か「減らす」かも含めて、まずはお気軽にご相談ください。
参考文献・情報源
- 厚生労働省.健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(2024年2月).https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38541.html
- ナルメフェン塩酸塩水和物錠 添付文書(2021年11月改訂 第1版).医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療用医薬品情報検索.
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- Palpacuer C, et al. Risks and benefits of nalmefene in the treatment of adult alcohol dependence: a systematic literature review and meta-analysis of published and unpublished double-blind randomized controlled trials. PLoS Med. 2015;12(12):e1001924. https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1001924
- 新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン作成委員会.新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン.新興医学出版社;2018.
- 広島市精神保健福祉センター.依存症相談窓口.https://www.city.hiroshima.lg.jp/living/kenkou/1021217/1027977/1013546.html
※本記事は2026年10月時点の情報をもとにした一般的な解説で、個別の診断や治療に代わるものではありません。効果や副作用の現れ方には個人差があります。お薬を使うかどうかは、診察のうえで医師が判断します。