医療コラム
- HOME
- 医療コラム

COLUMN医療コラム
「健診で『動脈硬化が進んでいるかもしれません』と言われた」
「頸動脈エコーで『プラークがある』『少し狭くなっている』と言われたけれど、どのくらい心配すればいいの?」
広島市南区・宇品のうじな家庭医療クリニックでは、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病の診療の中で、頸動脈(けいどうみゃく/頚動脈)エコーを積極的に活用しています。
この記事では、頸動脈エコーでわかる「狭窄率(きょうさくりつ)」と脳梗塞・心筋梗塞のリスクの関係、そしてそこから見えてくるコレステロール治療の大切さと目標値について、国内外の研究と日本のガイドラインに沿って解説します。
この記事でわかること
- 頸動脈エコーで何がわかるのか(IMT・プラーク・狭窄率)
- 狭窄率と脳梗塞リスクの関係
- 首の血管と心筋梗塞リスクの関係
- LDLコレステロールの目標値(日本と海外の考え方)
- すぐに受診が必要な症状と、検査をおすすめしたい方
🩺 頸動脈エコーで何がわかる?
頸動脈は、首の左右を通って心臓から脳へ血液を送る太い血管です。皮膚のすぐ下にあるため、超音波(エコー)で血管の壁を直接、くわしく観察できる数少ない場所です。動脈硬化は全身で同時に進むことが多いため、頸動脈は「全身の動脈硬化をのぞく窓」ともいわれます。
頸動脈エコーでは、主に次の3つを確認します。
| 見ているもの | わかること |
|---|---|
| IMT (内膜中膜複合体厚) |
血管の壁の厚さです。動脈硬化が進むと、少しずつ厚くなります。 |
| プラーク | 血管の壁にコレステロールなどがたまってできた盛り上がりです。日本の評価法では、1.1mm以上の限局した盛り上がりをプラークと呼びます。大きさや数に加えて、やわらかさや表面の状態(性状)も確認します。 |
| 狭窄率 | プラークによって血液の通り道がどれくらい狭くなっているか(%)です。断面の計測に加えて、血液の流れる速さからも推定します。 |
検査はどんな感じ?
あおむけに寝て、首にゼリーを塗り、超音波の器具を当てるだけの検査です。痛みや放射線の被ばくはなく、食事の影響も受けにくい検査です。所要時間は15〜20分程度が目安です。
📈 狭窄率が高いほど、脳梗塞のリスクは高くなる
頸動脈のプラークが原因となる脳梗塞は、主に2つのしくみで起こると考えられています。ひとつは、プラークの表面にできた血の塊(血栓)やプラークのかけらがはがれて、脳の血管に詰まること。もうひとつは、狭窄が強くなり、脳へ届く血液が足りなくなることです。
英国オックスフォードの地域住民を対象とした研究(OxVasc)では、症状のない頸動脈狭窄(無症候性頸動脈狭窄)がある方を、薬による治療を続けながら追跡し、狭窄の程度と「同じ側の脳卒中」の起こりやすさを調べました。
| 狭窄率 | 5年間で同じ側に 脳卒中を起こした割合 |
|---|---|
| 50〜69%(中等度) | 0% (154人中0人) |
| 70〜99%(高度) | 14.6% (53人中6人) |
| 50〜79% | 1.0% (173人中1人) |
| 80〜99% | 18.3% (34人中5人) |
出典:Howard DPJ, et al. Lancet Neurol. 2021(OxVasc)。上2行と下2行は、狭窄率の区切り方を変えて比べたものです。%は追跡期間の長さの違いを考慮して計算した5年間の推定値のため、人数から単純に割った値とは一致しません。
同じ論文では、過去の56件の研究(約1万3,700人)をまとめた解析も行われ、狭窄が強いほど脳卒中のリスクが高いという関係が示されました。一方で、中等度(50〜69%)の狭窄では、現在の薬による治療を受けていれば、5年間の脳卒中のリスクは5%未満と低いことも示されています。
数字を読むときの注意点
この研究は観察研究で、高度狭窄の方は50人ほどと少なく、数値には大きな幅があります。対象は、一過性脳虚血発作や脳卒中の疑いで受診した方のうち、その症状とは関係のない頸動脈に狭窄が見つかった方です。米国の約3,700人を対象とした研究では、70〜99%の狭窄があり手術を受けなかった方の5年間の脳梗塞発症率は4.7%と報告されており、研究によって数字には幅があります。また、過去の手術の臨床試験で薬物治療のみを受けたグループでは、狭窄率とリスクの関係ははっきりせず、参加者の選ばれ方が影響した可能性が指摘されています。
狭窄率だけでなく「プラークの性質」も大切
プラークの性質もリスクに関わることがわかってきました。日本の頸動脈エコーの評価法では、エコーで黒っぽく写るやわらかいプラーク(低輝度)、表面がえぐれた潰瘍、血流で揺れ動くプラーク、表面を覆う膜が薄いプラーク、短期間で大きくなるプラークなどを「注意すべきプラーク」として報告します。
症状のない頸動脈狭窄の方を対象とした64件の研究(約2万人)をまとめた解析では、MRIやエコーなどで「高リスクの特徴」をもつプラークが約4人に1人(26.5%)にみられました。そうしたプラークがある場合、同じ側の脳梗塞や一過性脳虚血発作の発生は年4.3%と、特徴がない場合(年1.2%)の約3倍だったと報告されています。狭窄率が同じでも、プラークの性質によってリスクが異なる可能性があるということです。
❤️ 首の血管は「心臓の血管」を映す鏡でもあります
頸動脈に動脈硬化がある方は、心臓を養う血管(冠動脈)にも動脈硬化が進んでいる可能性があります。そのため頸動脈エコーの所見は、脳梗塞だけでなく、心筋梗塞のリスクを考えるうえでも大切な手がかりになります。
- 血管の壁の厚さ(IMT):8件の研究をまとめた解析では、IMTが0.1mm厚いごとに、心筋梗塞のリスクが約15%、脳卒中のリスクが約18%高くなる関係が報告されています。
- プラーク:IMTよりも、プラークの有無のほうが将来の心臓の病気(冠動脈疾患)をより正確に予測できるという解析もあります。
- 狭窄がある方の見通し:50%以上の無症候性頸動脈狭窄がある方の経過をまとめた解析では、亡くなった方の約6割(62.9%)が心臓の病気によるもので、心臓が原因の死亡は年2.9%と推計されています。
「首の血管の病気」と聞くと脳のことばかりが気になりますが、実際には心臓を含めた全身の動脈硬化への対策が欠かせません。その中心になるのが、次にお話しするコレステロールの管理です。
💊 プラークの“材料”を減らす ― コレステロール治療が土台です
プラークの主な材料は、血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)です。LDLを下げる治療によって脳梗塞や心筋梗塞が減ることは、多くの臨床試験で示されてきました。たとえば、動脈硬化による病気がある方では、スタチン(コレステロールを下げる飲み薬)でLDLを約40mg/dL下げるごとに、心筋梗塞や脳卒中などの心血管の病気が約2割(21%)減ったという、多くの臨床試験をまとめた解析があります。
また、心臓の血管(冠動脈)の研究では、LDLを十分に下げることで、プラークが小さくなったり、破れにくい安定した状態に近づいたりすることも報告されています。
📊 2025年発表の大規模試験「CREST-2」から
症状のない70%以上の頸動脈狭窄がある約2,500人を対象に、米国など5か国の155施設で行われた臨床試験です。すべての参加者に、LDLコレステロール70mg/dL未満・収縮期血圧130mmHg未満を目標とした厳格な内科治療(禁煙・体重管理・糖尿病の管理を含む)を行ったうえで、手術(ステント治療・内膜剥離術)を加える意味が検証されました。
- 治療直後の脳卒中・死亡と4年以内の同じ側の脳梗塞をあわせた割合:
内科治療のみ 6.0% / ステント治療を追加 2.8% - 内膜剥離術を追加 3.7% / 内科治療のみ 5.3%(統計的に意味のある差は確認されず)
手術が向いているかどうかは、狭窄の程度やプラークの性質、年齢や全身の状態などから専門医が個別に判断します。ただ、どの治療を選ぶ場合でも、コレステロールと血圧をしっかり管理する内科治療が土台であることに変わりはありません。
🎯 LDLコレステロールの目標値は?
日本では、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」に沿って、その方の将来のリスクの大きさに応じてLDLコレステロールの管理目標値を決めます。
| 区分 | LDLコレステロール 管理目標値 |
|---|---|
| 一次予防・低リスク | 160mg/dL 未満 |
| 一次予防・中リスク | 140mg/dL 未満 |
| 一次予防・高リスク (糖尿病・慢性腎臓病・末梢動脈疾患のある方など) |
120mg/dL 未満 ※糖尿病に末梢動脈疾患・細小血管症の合併、または喫煙がある場合は100mg/dL未満 |
| 二次予防 (冠動脈疾患、アテローム血栓性脳梗塞の既往がある方) |
100mg/dL 未満 ※急性冠症候群、家族性高コレステロール血症、糖尿病、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の合併のいずれかがある場合は70mg/dL未満 |
※一次予防の区分は、年齢・性別・血圧・糖尿病・喫煙・コレステロール値などから、日本人のデータ(久山町研究)をもとに今後10年間の発症リスクを推定して決めます。
※アテローム血栓性脳梗塞には、頭の中や首の動脈に50%以上の狭窄を伴う脳梗塞なども含まれます。
頸動脈に狭窄やプラークが見つかったら、目標値は変わる?
脳梗塞や心筋梗塞を起こしたことがない方は、日本のガイドラインでは「一次予防」にあたり、上の表のリスク区分で目標値が決まります。頸動脈エコーの結果はこのリスク計算には含まれていませんが、動脈硬化がどこまで進んでいるかを直接確かめられる情報として、治療方針を考えるうえでの大切な判断材料になります。
海外や国内の専門家の間では、動脈硬化が確認された方をより厳しく管理する考え方も示されています。
欧州心臓病学会・欧州動脈硬化学会(2019年のガイドライン)
頸動脈エコーなどの画像検査で明らかなプラークが確認された方は、症状がなくても「超高リスク」に分類されます。
目標:LDL 55mg/dL未満、かつ治療前から50%以上の低下
CREST-2試験(2025年発表)
症状のない70%以上の頸動脈狭窄がある方を対象とした試験で、全員の治療目標として設定されました。
目標:LDL 70mg/dL未満(あわせて収縮期血圧130mmHg未満)
日本動脈硬化学会のワーキンググループ報告(2025年12月公表)
頭の中や首の動脈の狭窄(50%超)が原因で脳梗塞を起こした方(アテローム血栓性脳梗塞)について、目標をLDL 70mg/dL未満とする考え方が示されました(現行ガイドラインでは原則100mg/dL未満)。ガイドラインそのものではありませんが、日本でも目標値をより厳しくする方向で議論が進んでいることを示すものです。
目標値に「全員共通の正解」はありません
目標値は、エコーの所見、血液検査、持病(糖尿病・腎臓病など)、年齢、喫煙の有無、お薬の副作用の出やすさなどを総合して決めます。当院では日本のガイドラインを基本に、エコーの結果や海外の考え方も踏まえて、一人ひとりに合った目標をご本人と一緒に決めていきます。治療の効果や副作用の出方には個人差があります。
🥗 治療の進め方 ― 生活習慣とお薬
リスクの大きさにかかわらず、生活習慣の見直しはすべての方の土台になります。
- 禁煙:喫煙は動脈硬化を進める大きな要因です。
- 血圧の管理:ご自宅で血圧を測る習慣をつけましょう。CREST-2試験では、収縮期血圧130mmHg未満が目標とされました。
- 食事:脂身の多い肉、バター、洋菓子などの飽和脂肪酸を控えめにし、魚・大豆製品・野菜・海藻・きのこ・未精製の穀物を取り入れましょう。
- 運動:早歩きなどの有酸素運動を、1日30分以上・週3回以上、または週150分以上が目安です。
- 体重・血糖の管理:糖尿病がある方は、血糖の管理も動脈硬化の予防につながります。
生活習慣の見直しだけで目標に届かない場合は、お薬を使います。基本となるのはスタチン(肝臓でのコレステロールの合成をおさえる飲み薬)で、必要に応じてエゼチミブ(腸からのコレステロールの吸収をおさえる飲み薬)を組み合わせたり、PCSK9阻害薬などの注射薬が検討されたりすることもあります。
狭窄の程度や持病によっては、血液を固まりにくくするお薬(抗血小板薬)を検討することもありますが、出血のリスクとのバランスを考えて個別に判断します。お薬で気になる症状(筋肉の痛みなど)が出た場合は、自己判断で中止せず、まずはご相談ください。
🚨 こんな症状が出たら、すぐに119番を
次の症状が突然出たら、数分で治まったとしても、すぐに救急要請(119番)をしてください
- 片側の手足や顔の力が入らない、しびれる
- ろれつが回らない、言葉が出ない、相手の言うことが理解できない
- 片方の目が急に見えにくくなる(カーテンが下りるように暗くなる)
- 締めつけられるような胸の痛み・圧迫感
一時的に治まる発作(一過性脳虚血発作:TIA)は、本格的な脳梗塞の前ぶれのことがあります。頸動脈の狭窄が原因で症状が出た場合(症候性頸動脈狭窄)は、手術を含めた治療を急ぐ必要があります。
🔍 頸動脈エコーをおすすめしたい方
- 健診でLDLコレステロール・血圧・血糖の異常を指摘された方
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症・慢性腎臓病で治療中の方
- 喫煙している方、以前に長く吸っていた方
- ご家族に、若くして心筋梗塞や脳梗塞になった方がいる方
- 首の血管の雑音を指摘されたことがある方
- 狭心症・心筋梗塞や、足の血管の動脈硬化(閉塞性動脈硬化症)がある方
- コレステロールのお薬を始めるかどうか迷っている方
一方で、危険因子のない方に一律に検査を行うことは、米国の予防医療の専門委員会(2021年)では勧められていません。見つかった所見が治療方針を変えるとは限らず、不要な追加検査や手術につながるおそれがあるためです。当院では、診察で検査の必要性を判断したうえで実施しています。
🏥 うじな家庭医療クリニックの頸動脈エコー
当院では、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病の診療の一環として、頸動脈エコーを積極的に活用しています。血液検査(コレステロール・血糖・腎機能など)とエコーの結果をあわせて評価し、LDLコレステロールの目標値や今後の治療方針を、ご本人と相談しながら決めていきます。
高度の狭窄や注意すべきプラークが見つかった場合、また症状がある場合には、脳神経外科・脳神経内科など専門の医療機関と連携し、MRIなどの精密検査や治療についてご相談します。
健診結果をお持ちいただければ、その内容もふまえてご説明します。宇品・元宇品・出島エリアにお住まいの方も、どうぞお気軽にご相談ください。
参考・出典
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」(英語版:J Atheroscler Thromb. 2024;31:641-853)
- Tanaka A, et al. 日本動脈硬化学会ワーキンググループ報告(二次予防の脂質管理). J Atheroscler Thromb. 2026;33:336-364
- Howard DPJ, et al. 無症候性頸動脈狭窄の程度と脳卒中リスク(OxVasc). Lancet Neurol. 2021;20:193-202
- Chang RW, et al. 手術を受けなかった高度無症候性頸動脈狭窄の脳梗塞発症率. JAMA. 2022;327:1974-1982
- Kamtchum-Tatuene J, et al. 高リスクプラークの頻度と脳卒中リスク. JAMA Neurol. 2020;77:1524-1535
- Lorenz MW, et al. 頸動脈IMTと心血管イベントの予測(メタ解析). Circulation. 2007;115:459-467
- Inaba Y, et al. 頸動脈プラークとIMTによる冠動脈疾患の予測(メタ解析). Atherosclerosis. 2012
- Giannopoulos A, et al. 無症候性頸動脈狭窄の長期死亡率. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2015;50:573-582
- Cholesterol Treatment Trialists’ Collaboration. Lancet. 2012;380:581-590
- Brott TG, et al.(CREST-2). N Engl J Med. 2026;394:219-231
- Mach F, et al. 2019 ESC/EAS 脂質異常症ガイドライン. Eur Heart J. 2020;41:111-188
- 米国予防医療専門委員会(USPSTF)無症候性頸動脈狭窄のスクリーニングに関する推奨(2021年)
- 厚生労働省 健康づくりサポートネット「動脈硬化」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。検査や治療の必要性、効果や副作用には個人差があります。気になる症状や検査結果がある方は、医療機関にご相談ください(2026年10月時点の情報です)。