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夏になると増える「蚊に刺された」というお悩み。家族の中でも「自分だけ刺されやすい」と感じる方は多いのではないでしょうか。実はそれ、気のせいではありません。
近年の研究で、皮膚にすむ細菌と「足のにおい」が、蚊の刺されやすさに深く関係していることがわかってきました。
当院は広島市南区宇品で、内科・小児科・がん薬物療法・在宅診療を行う家庭医療のクリニックです。この記事では、なぜ蚊に刺されやすい人がいるのかという科学的な仕組みと、特にお子さんを虫刺されから守るための医学的に推奨される方法を、わかりやすくまとめました。
🦟 なぜ「自分だけ刺されやすい」のか
蚊は、私たちの体から出るさまざまな手がかりを頼りに近づいてきます。その中でも大きな役割を果たしているのが、皮膚から漂う「におい」です。
このにおいは、汗そのものだけでなく、皮膚にすみついている常在菌(皮膚の細菌)が汗の成分を分解してつくり出す物質によって生まれます。この皮膚の細菌の種類や量には個人差があり、それが「刺されやすさ」の違いを部分的に説明していると考えられています。
研究では、特定の皮膚の細菌が蚊を強く引き寄せることがわかっています。これらの細菌は、蚊を誘う短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)と呼ばれるにおい物質をつくり出します。短鎖脂肪酸は、いわゆる「足のにおい」の主な原因物質でもあります。つまり、足のにおいと蚊の刺されやすさは、同じ細菌・同じにおい物質を介してつながっているのです。
👣 足は特に蚊に狙われやすい
足は汗腺が多く、靴や靴下で密閉されて湿度が高くなるため、細菌が繁殖しやすい環境です。その結果、足からは蚊を引き寄せる物質が多く放出されます。「足元から刺されることが多い」と感じるのには、こうした理由があります。
🔬 「刺されやすさ」は数年単位で安定している
2022年に医学誌『Cell』に発表された研究では、蚊に非常に刺されやすい人は、皮膚から放出される「カルボン酸」という物質の量が明らかに多いことが示されました。さらに、この違いは数年間にわたって変わらず安定していたと報告されています。「昔から自分だけよく刺される」という実感には、体質的な裏づけがあるわけです。
👶 子どもを虫刺されから守る医学的な方法
大人以上に気をつけたいのが、お子さんの虫刺されです。米国小児科学会(AAP)や米国疾病対策センター(CDC)は、虫除け剤の使用と、物理的に虫を防ぐ工夫を組み合わせることを推奨しています。順番に見ていきましょう。
① 年齢に合った虫除け剤を選ぶ
市販の虫除け剤にはいくつかの有効成分があり、年齢によって使えるものが異なります。代表的なものを整理します。
🟢 生後2か月以上のお子さんに使えるもの
- ディート(DEET):最も研究の蓄積がある成分で、幅広い虫に効果があります。米国小児科学会は生後2か月以上には濃度30%までを推奨。乳幼児・小児には20〜30%程度が適切で、必要な分だけ控えめに使うのが基本です。
- イカリジン(ピカリジン):生後2か月以上に濃度10%まで推奨。ディートと同等の効果がありながら、刺激が少なく無臭でべたつきません。
- IR3535:3成分の中で最も刺激が少なく、生後2か月以上のお子さんや妊娠中の方にも使えます。
🟡 3歳以上から使えるもの
- レモンユーカリ油(OLE/PMD):3歳未満のお子さんには、皮膚アレルギーのおそれがあるため使用を避けます。3歳以上で選択肢になります。
② 虫除け剤を安全に使うためのポイント
成分を正しく選んでも、使い方を誤ると皮膚トラブルや誤飲につながります。次の点に注意してください。
- 2歳未満のお子さんには、手のひらへの塗布を避ける(口に入れてしまうため)
- 手・目・口のまわり、傷や炎症のある皮膚には塗らない
- 顔に使うときは、大人がいったん自分の手にとってから、お子さんの顔に薄くのばす
- 必ず製品ラベルの使用方法・対象年齢を確認する
- 日焼け止めと併用するときは、日焼け止めを先に塗ってから虫除け剤を塗る
- 「日焼け止め+虫除け」の混合タイプの製品は推奨されない
なお、長く使われてきた実績から、ディートは表示どおりに正しく使えば副作用のリスクは非常に低いことが知られています。過去に報告された問題の多くは、不適切な使用・過剰な使用・誤飲によるものでした。「子どもにディートは怖い」と過度に避ける必要はなく、年齢と濃度を守って使うことが大切です。
③ 物理的に虫を防ぐ工夫
虫除け剤と合わせて、虫を寄せつけない環境づくりも効果的です。
- 気候に合わせて、長袖・長ズボンで肌の露出を減らす
- ベビーカーや抱っこひもに虫除けネット(蚊帳)をかける
- エアコンや網戸のある部屋で寝かせる。なければ蚊帳の下で寝かせる
- 蚊の活動が活発になる明け方と夕暮れ時は、屋外での活動を控えめにする
衣類や蚊帳に処理して使うペルメトリンという成分もあります。これは衣類・靴・蚊帳に塗布して虫を防ぐもので、洗濯を重ねても効果が持続します。ただし皮膚に直接塗ってはいけません。あくまで衣類などに使うものとお考えください。
④ 日々のケア:足を清潔に保つ
記事の前半でお伝えしたように、蚊を引き寄せるにおいは皮膚の細菌がつくり出します。今すぐできる対策として、足をこまめに洗い、清潔に保って細菌の増殖を抑えることは理にかなった方法です。お子さんが汗をかいたら着替えさせる、外遊びのあとは足を洗う、といった日常のケアも、虫刺されを減らす助けになります。
🩺 刺されてしまったとき、受診の目安は
虫刺されの多くはかゆみや赤みだけで自然に治まりますが、次のような場合は医療機関へのご相談をおすすめします。
腫れが急速に広がる/強い痛みや熱を持つ/水ぶくれや膿が出る/発熱を伴う/かき壊して化膿してしまった ——こうしたケースは受診をご検討ください。特に乳幼児は症状が出やすく、かき壊しから「とびひ」に進むこともあります。
当院では小児科・内科の診療を行っており、お子さんから大人まで、夏場の皮膚トラブルや虫刺されのご相談に対応しています。「これくらいで受診していいのかな」とためらわず、お気軽にお越しください。
📚 あわせて読みたい関連コラム:お子さんの夏の体調管理について/汗と皮膚トラブルの対処法(※リンク先URLは公開済みの該当記事に差し替えてください)
監修:瀬尾卓司(がん薬物療法専門医・家庭医療専門医)
うじな家庭医療クリニック
〒734-0003 広島県広島市南区宇品東6-2-47
TEL:082-256-4500
診療科目:内科・小児科・がん薬物療法・在宅診療