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【宇品】入園前のRSウイルス予防注射エヌフロンシア|うじな家庭医療クリニック

「保育園に入ったら、すぐ熱を出して呼び出されるって聞くけど、うちの子は大丈夫かな…」。入園を控えたご家庭から、こうしたご相談をよくいただきます。0歳・1歳での入園で最初にぶつかる壁のひとつがRSウイルス感染症です。2026年8月、生後はじめての流行期を迎えるすべての赤ちゃんを対象にした新しい予防の注射薬「エヌフロンシア(一般名:クレスロビマブ)」が国内で発売されました。この記事では、その仕組み・効果・費用・入園前のタイミングについて、家庭医の立場から解説します。

この記事のポイント

  • RSウイルスは2歳までにほぼ全員が感染し、乳児期は重症化しやすい
  • 入院する赤ちゃんの大多数は、基礎疾患のない「健康な子」
  • エヌフロンシアは1回の筋肉注射で約5〜6か月、RSウイルスによる重い下気道感染症のリスクを下げる
  • 国内では全額自費。入園前のタイミングで検討する価値がある

RSウイルス感染症とは:赤ちゃんの「ただの風邪」で済まないことがある

RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、鼻水・咳・発熱を起こすごくありふれたウイルスで、2歳までにほぼすべての子どもが一度は感染するといわれています。大人や年長の子どもでは軽い風邪症状で終わることが多いのですが、生後間もない赤ちゃんでは気管支の細い部分に炎症が及ぶ「細気管支炎」や肺炎へ進み、呼吸が苦しくなって入院が必要になることがあります。

国内では、毎年約12万〜14万人の2歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症と診断され、そのうち3万〜5万人が入院を要したと報告されています。さらに東京近郊12施設で入院した3歳未満の児を調べた研究では、入院患者の約98%は早産や心臓病などのハイリスク要因を持たない赤ちゃんだったと報告されています(Seimiya A, et al. Pediatr Int 2021)。「元気に生まれた子だから大丈夫」とは言い切れないのが、RSウイルスの怖さです。

保育園入園と「急な発熱の呼び出し」

保育園は、同年代の子どもたちが密に接する環境です。RSウイルスは飛沫や手指・おもちゃを介して広がりやすく、集団生活が始まると感染の機会は大きく増えます。0歳で入園した場合、生後はじめての流行期を園で迎えることになり、発熱→お迎え要請→数日の欠勤、という流れが起こりやすくなります。

もちろん、園で流行する感染症はRSウイルスだけではありません。ただ、RSウイルスは乳児期に重症化しやすく、入院につながりやすいという点で他の風邪ウイルスと区別されます。ここを予防しておくことは、ご家庭の負担を減らすうえで意味があると考えています。

なお、近年のRSウイルスの流行時期は年によって変動し、夏から秋にかけて患者数が増える年が多くなっています。入園時期だけでなく、その年の流行状況も踏まえて投与時期をご案内します。

エヌフロンシア(クレスロビマブ)とは

エヌフロンシアは、RSウイルスに対する「抗体」そのものを赤ちゃんの体に直接届ける注射薬です。ワクチンのように自分で免疫を作らせるのではなく、出来上がった抗体を投与するため、投与後まもなく効果が期待できるのが特徴です。体内で長く働くように設計された長時間作用型の抗体で、1回の筋肉注射で1シーズン(約5〜6か月)効果が続くと考えられています。

項目 内容
一般名クレスロビマブ(遺伝子組換え)
国内承認・発売2026年6月承認、2026年8月発売
対象生後はじめてのRSウイルス流行期を迎える新生児・乳児(ハイリスク児に限らない)
投与方法筋肉注射 1回(105mg固定用量・体重による調整不要)
費用区分薬価基準未収載のため全額自費

これまで国内には、早産児や心疾患などハイリスクの赤ちゃんを対象に保険で使える予防抗体薬(パリビズマブ、ニルセビマブ)がありましたが、基礎疾患のない満期産の赤ちゃんが使える選択肢は限られていました。エヌフロンシアは、すべての赤ちゃんの「はじめての流行期」を守ることを目的に位置づけられた薬剤です。日本小児科学会からも、国内での使用に関するコンセンサスガイドラインが公表されています。

臨床試験でわかっている効果

健康な早産児・満期産児3,614人を対象とした国際共同第2b/3相試験(CLEVER試験)では、投与150日時点で次の結果が報告されています。

受診を要するRSウイルス下気道感染症

60.4%減

95%CI 44.1–71.9

RSウイルスによる入院

84.2%減

95%CI 66.6–92.6

重症例ほど予防効果は大きく、投与180日時点で重症の下気道感染症に対して91.7%、入院に対して91.2%の減少が報告されています。試験参加者の大多数は満期産児(在胎35週以降)で、在胎週数にかかわらず一貫した結果が得られています。米国の予防接種諮問委員会(ACIP)のレビューでも同様の結果が確認され、2025年から米国では生後はじめての流行期を迎える乳児への使用が推奨されています。

安全性については、重い有害事象の発生率がエヌフロンシア群11.5%、プラセボ群12.4%と同程度でした。国内添付文書上、主な副作用として注射部位の腫れや赤み(1〜6%未満)が挙げられています。

知っておいていただきたい注意点

  • RSウイルス感染そのものをゼロにする薬ではありません。目的は、受診や入院が必要になるような中等症〜重症の下気道感染症を減らすことです。軽い鼻風邪までは防げない可能性があります。
  • 他のウイルスによる発熱は防げません。入園後の発熱がすべてなくなるわけではない点はご理解ください。
  • 対象は「生後はじめての流行期」の赤ちゃんです。すでにRSウイルスの流行期を一度経験しているお子さんは対象外となる場合があります。
  • ハイリスクの赤ちゃん(早産児、慢性肺疾患、先天性心疾患、ダウン症候群、免疫不全など)は、保険適用となる既存の予防抗体薬が優先される場合があります。
  • 妊娠中にRSウイルスの母子免疫ワクチンを接種された場合、赤ちゃんはすでに抗体を持って生まれているため、投与の必要性が変わります。母子手帳をご持参のうえご相談ください。

費用について(自費診療)

エヌフロンシアは薬価基準に収載されていないため、保険は適用されず全額自費となります。

当院での費用:[自費価格:〇〇,〇〇〇円(税込)/1回]

※自由診療です。効果の現れ方や持続期間には個人差があり、投与の適否は診察した医師が判断します。主な副作用として注射部位の腫れ・赤みなどが報告されています。

入園前、いつ打つのがよい?

効果が約5〜6か月続くことを踏まえると、「入園の少し前」かつ「流行期の直前〜流行期中」に投与するのが基本の考え方です。4月入園の場合は年明け〜3月、途中入園の場合は入園前の受診時にご相談ください。定期接種([内部リンクURL:6種混合ワクチンの記事])のスケジュールと合わせて計画することもできます。同時接種の可否や順番は診察時にご案内します。

当院は小児科・内科をあわせた家庭医療のクリニックです。RSウイルスの予防だけでなく、入園後に増えやすい発熱・喘鳴([内部リンクURL:小児気管支喘息の記事])や、秋冬のインフルエンザワクチン([内部リンクURL:小児インフルエンザワクチンの記事])まで、ご家族全員をまとめて診られる体制で対応しています。

まとめ

RSウイルスは、健康に生まれた赤ちゃんでも入院につながることがある感染症です。エヌフロンシアは、生後はじめての流行期を迎えるすべての赤ちゃんを対象に、1回の注射で受診・入院のリスクを下げることが臨床試験で示されている新しい選択肢です。全額自費という点は慎重に検討が必要ですが、保育園入園を控えたご家庭にとって、備えのひとつとして知っておく価値があると考えています。気になる方は、まずは院長外来でご相談ください。

RSウイルス予防のご相談は、まずは院長外来へ

院長診察日:火曜午前・水曜・木曜午後・金曜・土曜

母子手帳をご持参ください。入園時期に合わせた投与スケジュールをご案内します。

ネット予約はこちら

お電話:082-256-4500

うじな家庭医療クリニック
〒734-0003 広島県広島市南区宇品東6-2-47

この記事の監修

瀬尾卓司(うじな家庭医療クリニック 院長)

家庭医療専門医・がん薬物療法専門医・総合診療指導医。医療法人社団瀬尾医院。内科・小児科・がん薬物療法・在宅診療を通じて、宇品・元宇品・出島エリアのご家族の健康を支えています。

参考文献・情報源

  1. Zar HJ, et al. Clesrovimab for Prevention of RSV Disease in Healthy Infants. N Engl J Med. 2025;393(13):1292-1303. https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2502984
  2. Moulia DL, et al. Use of Clesrovimab for Prevention of Severe RSV-Associated Lower Respiratory Tract Infections in Infants: Recommendations of the ACIP — United States, 2025. MMWR 2025;74(32):508-514. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC12393692/
  3. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 日本におけるクレスロビマブの使用に関するコンセンサスガイドライン(2026年6月). https://www.jpeds.or.jp/society-activities/column/gideline/70187.html
  4. 厚生労働省. RSウイルスワクチン(母子免疫). 厚生労働省ウェブサイト
  5. Seimiya A, et al. Pediatr Int. 2021;63(2):219-221.
  6. エヌフロンシア筋注シリンジ105mg 電子添文・インタビューフォーム(MSD株式会社、2026年8月改訂)