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膵臓がんは、日本で年間約45,000人が新たに発症すると言われており(国立がん研究センター統計情報)、依然として深刻な疾患の一つです。この病気の最大の課題は、初期段階で症状がほとんど現れないことです。そのため、多くの患者さんがステージ3や4の進行がんの段階で診断されることが多く、生存率が低くなっています。
しかし、膵臓がんのリスク因子を理解し、適切なスクリーニング検査を受けることで、早期発見の可能性を高めることができます。当院では、膵臓がんの早期発見のために、最新の検査技術を導入しています。
本記事では、膵臓がんのリスク要因と、当院で実施している検査について詳しくご紹介します。
膵臓がんのリスク因子
膵臓がんは、複数の要因が絡み合って発症することが知られています。特に以下のリスク因子を持つ方は、定期的な検査を受けることが推奨されます。
1. 家族歴(遺伝子の影響)
近年の研究により、膵臓がんには遺伝的要因が関与していることが明らかになっています。特に、BRCA遺伝子(BRCA1・BRCA2)の変異は、膵臓がんの発症リスクを高めることがわかっています。
BRCA遺伝子の異常は、乳がん、卵巣がん、前立腺がんとも関連しており、家族にこれらのがんの患者さんがいる場合は注意が必要です。
また、リンチ症候群などの遺伝性がん症候群も膵臓がんと関係しており、家族歴がある方は遺伝子検査を検討することが重要です。
2. 糖尿病(特に新規発症の糖尿病)
最新の研究(Nature, 2024)では、日本で21万人の糖尿病患者を追跡した結果、1,755人が膵臓がんを発症したことが報告されています。
特に、**最近になって糖尿病を発症した方(発症後2~3年以内)**は、膵臓がんの可能性を考慮し、慎重な経過観察が必要です。
また、長年糖尿病を患っている方もリスクが高いため、膵臓の定期的な検査を受けることが推奨されます。
3. 喫煙
喫煙は、膵臓がんの最も確立されたリスク因子の一つです。
研究によると、喫煙者は非喫煙者に比べて約2倍のリスクがあるとされています。
長年の喫煙が膵臓に慢性的な炎症を引き起こし、発がんのリスクを高めるため、禁煙が最も効果的な予防策となります。
4. 飲酒
過度の飲酒は、膵臓がんのリスクを間接的に高めます。
特に慢性膵炎の原因となるほどの大量飲酒は、膵臓の細胞にダメージを与え、がん発症のリスクを上昇させます。
適度な飲酒を心がけることが、膵臓がん予防の一環となります。
5. 肥満(メタボリックシンドローム)
内臓脂肪型肥満は、膵臓がんのリスク因子の一つです。
特に、肥満がインスリン抵抗性を引き起こし、高インスリン血症が膵臓の細胞増殖を促進することが知られています。
また、糖尿病とも関連が深いため、適正体重の維持がリスク低減につながります。
6. 高脂肪・高カロリー食
加工肉や動物性脂肪の過剰摂取は、膵臓がんの発症リスクを高める可能性があります。
食生活の改善として、野菜・果物・食物繊維を多く摂取することが重要です。
膵臓がんの検査方法
当院では、膵臓がんの早期発見を目指し、さまざまな検査を組み合わせて診断の精度を高めています。
1. 遺伝子検査
膵臓がんのリスクが高い方(家族歴がある方など)には、BRCA遺伝子変異をはじめとする遺伝子検査を実施しています。
遺伝的リスクを知ることで、より適切なスクリーニングや予防対策が可能になります。
2. 糖尿病検査
当院では、糖尿病のスクリーニング検査を実施し、糖尿病が膵臓がんのリスクとなるかを評価します。
特に、新規発症の糖尿病患者さんには膵臓の検査を推奨しています。
3. 超音波検査・造影CT
当院では、精度の高い超音波検査と造影CTを組み合わせることで、膵臓がんの早期発見を目指しています。
膵臓は消化管の奥に位置し、通常の検査では見つけにくい臓器ですが、これらの高度な画像診断技術を活用することで、小さな腫瘍でも発見できる可能性が高まります。
4. 栄養指導
膵臓がんの予防には、日々の食生活の改善が欠かせません。
当院では、管理栄養士による個別の栄養指導を行い、膵臓がん予防のための食事改善をサポートしています。
5. ダイエット・痩身外来
当院では、自費診療部門のKYPROSと共同でダイエット・痩身外来を開設しています。
適正体重を維持することで、膵臓がんのリスクを低減し、健康的なライフスタイルを支援します。
まとめ
膵臓がんは、早期発見が難しいがんの一つですが、リスク因子を理解し、定期的な検査を受けることで早期診断の可能性を高めることができます。
当院では、最新の検査技術を用いて、膵臓がんの早期発見に努めています。
家族歴がある方や糖尿病の方は、ぜひ一度検査を受けることをおすすめします!