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こんにちは、広島市南区・宇品の うじな家庭医療クリニック です。
がんに関する検査が進化しており、「複数がん早期発見検査(MCED: Multi-Cancer Early Detection)」という新しいタイプの検査が注目されています。当院が提供する がん遺伝子パネル検査(Guardant シールド/リビール/360 など)と、MCEDの特徴を比較しながら、「どんな人がどの検査を検討すべきか」をわかりやすくご説明します。
MCED検査とは何か? ~MD Andersonの記事からのポイント~
MD Anderson の最新記事によれば、MCED検査は以下のような特徴と現在の立ち位置があります。 (MD Anderson Cancer Center)
血液を用いた検査で、複数種類のがんを症状が出る前に検出することを目的としています(液体生検の一種)。 (MD Anderson Cancer Center)
血液中のDNA変化やタンパク質パターンを、機械学習(AI)で解析し、「がんの原因または発生場所」を推定する可能性があります。 (MD Anderson Cancer Center)
メリットとして、がんのステージが進む前に発見できれば、治療がしやすくなる/負担が少ない治療で済む可能性があることが挙げられています。 (MD Anderson Cancer Center)
一方で、偽陽性(がんではないのに「がんかもしれない」と出る)や偽陰性(がんがあっても検出されない)、追加検査の必要性、過剰診断・過剰治療のリスクなどが指摘されています。 (MD Anderson Cancer Center)
現時点ではFDA(米国の許認可機関)による正式承認はされておらず、保険適用も一般的ではありません。検査費用・フォローアップ体制などが未確定な点が多いです。 (MD Anderson Cancer Center)
当院で提供しているがん遺伝子検査(ガーダント等)の内容
うじな家庭医療クリニックでは、以下の遺伝子検査サービスを自費診療でご案内しています。(ujina-family-clinic.com)
検査名 | 対象 / 特長 | 目的(何を調べるか) | 費用(目安) |
---|---|---|---|
Guardant Shield | 主に大腸がん | 採血のみで大腸がん関連の遺伝子変化を調べ、早期診断への手がかりとする | 約 275,000円 (ujina-family-clinic.com) |
Guardant Reveal | 肺がん・乳がん・大腸がん | 治療後に血液中に「残っているがんの痕跡(残存/再発の可能性)」を調べる | 約 275,000円 (ujina-family-clinic.com) |
Guardant 360 | 83 遺伝子を対象(進行がん・転移がある場合など) | 組織が取れない/取れにくいケースで、より広範な遺伝子パネルによる情報を得る | 約 590,000円(税込) (ujina-family-clinic.com) |
受診から結果説明までの流れもクリアにしており、説明 → 採血 → 結果説明まで通常 4~6週間 かかります。(ujina-family-clinic.com)
MCED vs 遺伝子パネル検査:違いと共通点
以下、MCED検査と遺伝子パネル検査(当院でのものを含む)の主な違い・共通点を比較してみます。
項目 | MCED の特徴 | 遺伝子パネル検査(当院の Guardant 等) |
---|---|---|
がん検出の対象範囲 | 多くのがん種(2〜50種類以上) を一度に調べる可能性あり (MD Anderson Cancer Center) | 特定のがん種または進行がん、特定の遺伝子を中心に調べるもの(大腸がん・再発リスク等) (ujina-family-clinic.com) |
検出時期 | 症状が出る前の“早期ステージ”を狙うものが多い (MD Anderson Cancer Center) | 診断確定後・治療後の残存がん探し・転移/進行が確認されたあとの補足的検査などが中心 |
許認可・保険適用 | 現時点では一般的な許認可・保険適用なし (MD Anderson Cancer Center) | 当院の検査は自費診療で、保険診療での遺伝子パネル検査は日本でも一部制度化されていますが、当院では自費となっています。(ujina-family-clinic.com) |
偽陰性・偽陽性のリスク | あり。がんが非常に小さい・DNAの放出が少ない種類などは見逃される可能性あり (MD Anderson Cancer Center) | 遺伝子変異が検出できるケース/対象のがんで遺伝子変化が分かっているケースで有効性が高いが、すべてのがんをカバーできるわけではない |
フォローアップの必要性 | 陽性の場合は画像診断・生検等の追加検査が不可欠 (MD Anderson Cancer Center) | 結果によって専門病院での治療方針検討や治験参加などにつなげることが可能 |
どちらを選ぶか?検討すべきポイント
患者さんが「どの検査が自分に合っているか」を考える際、以下の点を参考にしてください。
がん家系・リスクの高さ
家族でがん多発例、遺伝性がん症候群の可能性がある、暴露歴があるなどリスクが高ければ、より広範な検査のメリットが大きくなります。治療後/再発リスクの確認
既にがんの治療を受けた方で、再発の可能性や治験への参加を希望される場合には、遺伝子パネル検査が役立つことがあります。費用と手間
MCEDは未だ高額・保険適用外のことが多いため、コスト・検査後の追加検査の可能性を含めて、総合的に考える必要があります。Guardant等も自費となるため、自己負担の見積もりをしっかり把握することが重要です。検査結果後のフォローアップ体制
陽性と出た場合の専門医の紹介、画像診断や生検などの診断体制が整っているか、またその後の治療までスムーズにつなげられるかをクリニックに確認しておくことが大切です。
当院としてのスタンスとおすすめの使い方
うじな家庭医療クリニックでは、遺伝子パネル検査を導入することで、がんの早期発見・再発予防を目指す皆さんをサポートしたいと考えています。ただし、以下のような方に特におすすめです:
がんの家族歴がある方
がん罹患中または治療歴があり、フォローアップを重視したい方
標準的ながん検診(大腸がん検診、乳がん検診など)を受けつつさらに安心を求めたい方
また、MCED 検査については、今後日本でも許認可・保険の適用が進む可能性がありますが、現段階では十分な臨床試験データが集まっていないこと、追加検査や偽陽性の可能性などのリスクがあることを十分ご理解のうえ、ご判断いただくようアドバイスしています。(AAFP)
よくある質問(FAQ)
質問 | 回答 |
---|---|
MCEDと遺伝子パネル検査、どちらが先に受けるべき? | まずは標準的ながん検診(便潜血・マンモグラフィー・胃内視鏡など)を受け、リスクや希望があれば遺伝子パネル検査を検討。それから、MCED が保険適用されたりエビデンスが確立されたなら検討対象になるかもしれません。 |
陽性が出たら必ずがん? | いいえ。偽陽性という「がんではないのにがんかもしれない」と出る結果もあり得ます。追加検査が必要です。 |
検査を受けたら安心できる? | 検査は情報を増やして判断を助けますが、100%の保証ではありません。検査が陰性でもがんがないとは限らず、陽性でもすぐに問題があるとは限りません。生活習慣・定期検診を続けることが大切です。 |
まとめ
MCED 検査はとても将来性のある技術で、複数の種類のがんを早期に見つける可能性がありますが、現時点では未承認・保険対象外などリスク・限界もあります。
当院の遺伝子パネル検査(Guardant シールド・Reveal・360)は、特定用途やがん治療・再発リスクの把握などに利用でき、有用な選択肢です。
自分の状況・リスク・生活スタイル・検査後のフォロー体制などを考えて、医師と十分に相談したうえで決めることをおすすめします。