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🧬 新しい研究 — ctDNAで“見えにくい再発リスク”を予測 (2025年12月4日発表)

最近、国際誌 JAMA Oncology に、ステージ IIIの大腸がん患者を対象にした大きな解析の結果が報告されました。 JAMA Network
この研究では、手術後に血液中のctDNA を測定することで、“がんの微小残存病変 (MRD: molecular residual disease)” の有無を判定。ctDNAが陽性(=残存病変あり)だった患者さんは、そうでない人と比べて 再発リスクや生存率が明らかに悪い — つまり、術後に「見た目で異常がなくても」再発の可能性を早期に察知できる、というものです。 JAMA Network+2OUCI+2

さらに興味深いのは、ctDNA陽性の患者さんに対しては、術後の補助療法(この研究では抗がん剤+NSAID)が有益であった可能性がある、という点。 ctDNAを使うことで、より「個別化された治療判断」が可能になるかもしれません。 JAMA Network


🔎 ctDNA検査とは?なぜ注目されているのか

  • ctDNAとは、腫瘍細胞から血液中に出てくる断片DNAのことで、画像検査では確認できないような “ごく小さな病変” を捉えられる可能性があります。いわゆる「液体生検 (liquid biopsy)」の一種です。 ウィキペディア+2OUCI+2

  • 多くの研究で、「手術後にctDNA陽性 → 再発リスク大」「ctDNA陰性 → 再発リスク低め」という相関が報告されています。これにより、従来の病理情報や画像診断だけでは見えづらかったリスクを、より正確に評価できるようになってきています。 PubMed+2MDPI+2

  • また、最近の報告 (例: DYNAMIC trial) では、ctDNAを使って補助化学療法(ACT)の必要性を減らしつつも、再発リスクをコントロールできた、というデータもあり、過剰治療の抑制にも期待されています。 PubMed+1


✅ 当院でも ctDNA 検査が可能です

うじな家庭医療クリニックでは、血液によるがんリスク評価・モニタリングの一環として、ctDNA検査の実施が可能です。

  • 術後の経過観察や再発リスクの判定

  • 手術適応や補助療法の検討の補助
    など、患者さんの状態や希望に応じた活用が可能です。

ご関心のある方は、お気軽にご相談ください — メリット・限界、他の検査 (画像診断、腫瘍マーカーなど) との組み合わせについても丁寧にご説明いたします。


💡 患者さん・ご家族のみなさまへ

  • 「手術して終わり」ではなく、見えないがんの“かたまり”が残っていないかを確認できる新しい方法が、現在臨床で使えるようになりつつあります。

  • ctDNA 検査は万能ではありません — 感度や限界もあるため、画像診断や既存のマーカー (腫瘍マーカー、定期検査) との併用が基本です。

  • ただし、「もし将来を考えるなら」「再発の不安を少しでも減らしたい」「補助療法の必要性をできるだけ明確にしたい」などの希望がある方には、有力な選択肢となる可能性があります。