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こんにちは。うじな家庭医療クリニックの瀬尾です。
最近、肥満と癌の関係について、世界的に権威のある医学雑誌『JAMA(米国医師会雑誌)』に重要な研究が発表されました(2026年3月9日)。今日はこの最新の研究結果をもとに、肥満と癌の深い関係について、わかりやすくお伝えしたいと思います。
■ 肥満は癌の大きなリスク要因です
この研究によると、過体重および肥満は、米国における新規癌診断の約10%を占めていることが明らかになりました。特に子宮内膜癌や肝臓・胆嚢の癌では、なんと最大50%が肥満に関連しているとされています。
過体重とはBMI 25〜29.9、肥満とはBMI 30以上のことを指します。日本でも生活習慣の変化とともに肥満の方が増えており、私たちが日々の診療で真剣に向き合うべき課題です。
■ 肥満と関連する12種類の癌
研究では、以下の癌が肥満と強く関連していると報告されています:
- 子宮内膜癌
- 食道癌
- 胃癌
- 腎臓癌
- 大腸癌
- 肝臓癌
- 胆嚢癌
- 膵臓癌
- 前立腺癌
- 閉経後乳癌
- 卵巣癌
- 甲状腺癌
これだけ多くの癌が肥満と関わっていることに、驚かれる方も多いのではないでしょうか。
■ なぜ肥満が癌を引き起こすのか?——4つのメカニズム
肥満がなぜ癌のリスクを高めるのか、その理由は複雑ですが、主に以下の4つのメカニズムが働いていると考えられています。
①脂肪からの「毒素」放出
肥満になると、脂肪組織が本来の役割であるエネルギー貯蔵の機能を果たせなくなります。その結果、遊離脂肪酸という物質が過剰に血液中に放出され、それが体内で酸化ストレスやDNA損傷を引き起こし、癌細胞の発生につながります。
②慢性的な炎症
脂肪組織が炎症を起こすと、プロスタグランジンE₂やインターロイキン(IL-1β、IL-6)、TNF-αといった炎症性物質が全身に広がります。これらは腫瘍の成長を直接または間接的に促進してしまいます。
③ホルモンバランスの乱れ
肥満になると、体内ではエストロゲンやレプチンが増加し、逆にアディポネクチンという保護的なホルモンが減少します。特にエストロゲンの増加は、乳癌・卵巣癌・子宮内膜癌などホルモン感受性の癌を促進してしまいます。
④免疫力の低下
肥満は、癌細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞やNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の働きを弱め、逆に骨髄由来抑制細胞(MDSC)を増やしてしまいます。これにより、体が本来持っている「癌を排除する力」が低下してしまいます。
さらに、肥満は腸内環境にも悪影響を及ぼします。有益な腸内細菌(Akkermansia muciniphilaなど)が減少し、癌の発生に関わる菌(Bilophilaなど)が増えてしまうことも分かっています。
■ 体重を減らすと癌リスクは下がるのか?
では、体重を減らせば癌のリスクは下がるのでしょうか?
研究によると、体重を10%以上減らした人(バリアトリック手術や、GLP-1受容体作動薬を使用)では、肥満関連癌の発生率が緩やかに低下したという結果が出ています。
ただし、癌リスクを意味のある形で減らすには、体重の10%超の減量が必要である可能性が示唆されています。つまり、少しだけ痩せるのではなく、しっかりと体重を落とすことが大切だということです。
「緩やかなダイエットでは不十分かもしれない。しっかりとした体重管理が、癌予防につながります。」
■ 当院からのメッセージ
うじな家庭医療クリニックは、赤ちゃんからお年寄りまで、皆さまの健康を支える「あなたの人生に寄り添う、かかりつけ医」です。
肥満や体重管理、生活習慣の改善についてのご相談はもちろん、がん診療の専門家(腫瘍内科)も在籍しておりますので、癌の予防や、すでに癌の治療を受けられている方の「がんサバイバー外来」も行っています。
「最近太ってきた」「健康診断で肥満を指摘された」「癌が心配」など、どんな小さな不安でも構いません。遠慮なくご相談ください。
📞 肥満・体重管理・癌予防についてお気軽にご相談ください
うじな家庭医療クリニック
〒734-0003 広島市南区宇品東6丁目2番47号
TEL: 082-256-4500
https://ujina-family-clinic.com/
■ 参考文献
Shen S, Brown KA, Green AK, Iyengar NM. Obesity and Cancer: A Translational Science Review. JAMA. Published online March 9, 2026. doi:10.1001/jama.2026.1114