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糖尿病性腎症の新たな治療法:セマグルチドの効果とは?

糖尿病と慢性腎臓病の関係

2型糖尿病を患っている方は、慢性腎臓病(CKD)を発症するリスクが高く、腎不全や心血管疾患のリスクも増加します。これまで、腎臓を保護するためにRA系阻害薬(ACE阻害薬やARB)やSGLT2阻害薬が使用されてきましたが、新たな治療法としてGLP-1受容体作動薬であるセマグルチドが注目されています。

セマグルチドとは?

セマグルチドは、週に1回の注射で血糖値を改善し、体重減少効果もある薬剤です。これまで主に糖尿病治療薬として使われてきましたが、新たに慢性腎臓病の進行を抑える効果があることがFLOW試験で示されました。

FLOW試験の結果

この試験では、2型糖尿病と慢性腎臓病を併発している患者3,533名を対象に、セマグルチド(週1回1.0mg)またはプラセボ(偽薬)を投与し、約3.4年間追跡しました。

  • 腎不全や心血管死亡リスクが24%低下

  • 年間の腎機能低下率が緩やかに(eGFRの低下を1.16ml/min/1.73m²抑制)

  • 主要な心血管イベントのリスクが18%減少

  • 全死亡率が20%低下

特に、腎臓だけでなく心血管疾患のリスクも減少する点が大きなメリットといえます。

セマグルチドの安全性と副作用

試験では、セマグルチドを使用したグループの方が重篤な副作用の発生率が低い結果が出ました。ただし、一部の患者で胃腸障害(吐き気・下痢など)が見られることがあるため、医師と相談しながら使用することが重要です。

糖尿病性腎症の新たな治療選択肢として

今回の研究結果は、2型糖尿病と慢性腎臓病を持つ方にとって希望の光となるものです。セマグルチドは糖尿病治療薬としてだけでなく、腎臓や心臓を守る新しい選択肢として期待されています。

当院では、糖尿病と慢性腎臓病の最新治療について相談を受け付けています。ご自身の腎機能を守るためにも、ぜひ専門医と一緒に最適な治療法を見つけていきましょう。