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痩身外来とがん治療に関する6つの疑問

当院の自費診療部門KYPROSでは痩身外来を行っております。
美容としての減量もそうですが、健康のための減量を目標として取り組んでおります。
受診していただいた患者さんからは変形性膝関節症の痛みがよくなった、脂肪肝の数値が改善したなどの報告をいただいています。
肥満とがんは様々な関連が分かっているため、減量することが重要なことに異論をはさむ医師はいないです。

今回はMDアンダーソンがんセンターに掲載されていた、GLP-1製剤とがんに関する記事があったので共有させてもらいます。

肥満の解消は健康全般に多くの利点をもたらすことが知られていますが、大きな生活習慣の変更は簡単ではありません。特に肥満の方が新しい運動を始めると、ケガのリスクが高まり、それが原因で継続を断念することもあります。その結果、多くの人が減量薬に頼るようになっています。

最近、セマグルチドやチルゼパチド(マンジャロ)、リラグルチド、デュラグルチドといったGLP-1作動薬という新しいタイプの減量注射薬が注目を集めています。これらの薬は、体重を減らす効果が期待され、次々と新しい製品が承認されています。しかし、これらの薬がどのように機能し、特にがん患者が使用する際に注意すべき点は何でしょうか?

以下では、専門医の見解を基に、よくある質問に答えます。


1. GLP-1作動薬はどのように機能し、従来の減量薬とどう違うのか?

以前の減量薬は、食欲を抑えるものや脂肪吸収を抑えるものが主流でした。しかし、これらは副作用のために使用期間が限定されることが多く、患者にとって負担が大きいものでした。

GLP-1作動薬はもともと糖尿病治療薬として2005年から使用されていましたが、ここ10年で肥満治療にも適用されるようになりました。この薬は胃の内容物の排出を遅らせ、満腹感を持続させることで食事量を減らします。また、食後の血糖値を安定させるため、インスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制します。

研究によれば、GLP-1作動薬を使用した患者は体重の最大20%を減少させることが可能とされています。これは胃縮小術のような外科的手術と同程度の効果です。しかし、悪心や嘔吐、下痢といった副作用があり、一部の患者では胃麻痺(ガストロパレシス)との関連も指摘されています。

さらに興味深い点として、GLP-1は脳の神経細胞で作られる神経ペプチドであり、代謝や心血管機能を調節する視床下部で作用します。今後、他の臓器系に与える長期的な影響についてもさらなる研究が期待されます。


2. 減量注射はがんリスクを減少させるか?

この質問には2つの側面があります。

  1. 薬そのものががんリスクを低下させるのか?

  2. 肥満を減らすことでがんリスクが低下するのか?

2番目の質問については、答えは「はい」と言えます。ただし、注意点として、これらの薬は長期間使用することを前提としていません。一部の人は薬を使って体重を減らした後、薬を中断すると再び体重が増えることがあります。この場合、長期的ながんリスクの低下にはつながりません。

一方、薬そのものががんリスクを低下させるかについては、まだ研究段階です。ただし、最近の研究では、セマグルチド(マンジャロ)を使用した糖尿病患者が、他の糖尿病薬を使用した患者と比較して結腸直腸がんのリスクが低いことが示されています。これには体重の変化とは無関係な効果も含まれています。


3. 減量注射ががんリスクを増加させる可能性はあるか?

以前の研究では、GLP-1作動薬と甲状腺がんとの関連が指摘されましたが、その後の研究で因果関係は否定されています。


4. がん経験者にとっての減量注射のリスク

がん患者にとって特に注意すべき点として、以下が挙げられます。

  • 膵臓がん患者:膵炎リスクが高いため、GLP-1作動薬は一般的に避けられます。

  • 化学療法中の患者:悪心や嘔吐といった副作用を悪化させる可能性があります。

  • 筋肉量の減少:この薬は急激な体重減少を引き起こすため、筋肉量の減少が起こりやすく、化学療法の耐性が低下するリスクがあります。

これらの理由から、使用前に必ず主治医に相談することが重要です。


5. 減量薬以外の選択肢

減量薬以外にも、**肥満手術(バリアトリック手術)**は有効な選択肢として挙げられます。最近の研究では、肥満患者が手術を受けることで、がん診断リスクが大幅に低下することが示されています。これは今後さらに注目される分野であり、10–15年以内に多くの新しい研究結果が出ると予想されます。


まとめ

GLP-1作動薬は肥満治療の新しい選択肢として注目されていますが、副作用や使用条件には注意が必要です。特にがん患者の場合、主治医との十分な相談が不可欠です。また、生活習慣の改善や他の治療法も併せて検討することで、長期的な健康維持に繋げることができます。
当院では自費診療だけでなく、保険診療部門もあるため血液検査やCT、超音波など副作用出現時にも適切に対応いたします。

減量やがんリスクについて詳しく知りたい方は、当院までお気軽にご相談ください。