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抗がん剤・放射線治療中の口腔ケア|がん患者さんが知っておくべき口のトラブルと対策 うじな家庭医療クリニック|がん相談・外来化学療法

はじめに

抗がん剤治療や放射線治療を受けている患者さんから、「口の中が荒れてつらい」「食べ物の味がしなくなった」「口が乾いて話しにくい」というご相談をよくいただきます。

実は、がん治療による口腔(こうくう)トラブルは非常に多くの患者さんに起こります。しかし、正しいケアを事前に知っておくことで、多くの症状は予防・軽減できます。

2026年3月、世界的権威ある医学誌『JAMA Oncology』に、がん治療中の口腔ケアに関する患者向けガイドが掲載されました(Maret D, Epstein JB, Vigarios E. 2026)。本記事では、その内容をもとに、がん患者さんとご家族に知っていただきたい口腔ケアの知識を解説します。


なぜがん治療で口のトラブルが起きるの?

がん治療(抗がん剤・放射線・免疫療法など)は、増殖の速いがん細胞を攻撃します。しかし同時に、口の中の正常な粘膜や唾液腺の細胞も傷つけてしまうことがあります。

口腔トラブルは治療中のどの時期にも起こる可能性があり、放置すると治療の継続が難しくなることもあります。


特にリスクが高い方

以下に当てはまる方は、口腔合併症のリスクが特に高いとされています。

  • 頭頸部がん(口腔・咽頭・喉頭・甲状腺など)の患者さん
  • 化学療法(抗がん剤)を受けている方
  • 放射線療法を受けている方(特に頭頸部への照射)
  • 免疫チェックポイント阻害薬(免疫療法)を使用している方
  • 造血幹細胞移植(骨髄移植)を受けた方

よくある口腔合併症と対処法

1. 口腔乾燥症(ドライマウス)

原因: 頭頸部への放射線照射、一部の抗がん剤、骨髄移植

症状:

  • 口の中がひどく乾く
  • 入れ歯が合わなくなる
  • 飲み込みにくい、話しにくい

対処法:

  • こまめに水を飲む(一日を通じて少量ずつ)
  • 糖分なしのガムを噛む
  • 保湿ジェルや人工唾液を活用する
  • 医師から唾液分泌を促す薬が処方される場合あり
  • フッ素入り歯磨き粉で毎日の歯磨きを継続する

2. 口腔粘膜炎(口内炎・口のただれ)

原因: 化学療法・放射線療法による粘膜組織への直接ダメージ

症状:

  • 痛みのある口内炎・潰瘍
  • 食事・飲水が辛くなる
  • 話しにくくなる

対処法:

  • 柔らかい歯ブラシで優しく歯磨き
  • 塩水または重曹水でうがい(アルコール入りのうがい薬はNG)
  • 特定の抗がん剤投与中は「氷片を口に含む(口腔クライオセラピー)」が有効
  • 医療チームから処方された含嗽薬・鎮痛剤を使用

3. う蝕(虫歯)の急速進行

原因: 口腔乾燥による唾液減少→唾液の自浄作用・再石灰化作用の低下

症状:

  • 冷たいもの・熱いもの・甘いものへの歯の過敏
  • 歯に白色・褐色の斑点
  • 複数の歯に同時にう蝕が発生

対処法:

  • 高濃度フッ素入り歯磨き粉を毎日使用
  • 歯科医師によるカスタムフッ化物トレーの作製・使用
  • 定期的な歯科受診を継続する

4. 口腔感染症

原因: 免疫力低下による真菌(カンジダ)・ウイルス(ヘルペス)・細菌感染

症状:

  • 白い苔状のもの(口腔カンジダ症)
  • 潰瘍・赤み・灼熱感
  • 味覚の変化

対処法:

  • 抗真菌薬・抗ウイルス薬・抗菌薬を医師・歯科医師が処方
  • 自己判断で市販薬を使用せず、まず医療チームに相談を

すぐに医療チームに連絡すべきサイン

以下の症状が出たら、すぐにかかりつけ医またはクリニックへご連絡ください。

✅ 口の中の強い痛みや、なかなか治らない潰瘍
✅ 口の乾きが強くなった、唾液の性状が変わった
✅ 食事・飲み込みが困難になってきた
✅ 口の中に白いもの・赤い腫れ・出血などの感染徴候
✅ その他、口腔内で気になる変化がある


治療前・治療中・治療後のケアのポイント

治療開始前

  • 必ず歯科受診を行い、虫歯・歯周病を治療しておく
  • 喫煙している方は、禁煙支援について医療チームに相談する

治療中

  • 柔らかい歯ブラシを使用
  • 塩水・重曹水でのうがいを習慣化
  • アルコール含有のうがい薬は避ける
  • 口腔内の変化はすぐに医療チームへ報告

治療後

  • 口腔ケアを継続する(治療が終わっても油断しない)
  • 定期的な歯科検診を受け続ける
  • 口腔乾燥が続く場合はフッ化物の使用を継続

まとめ

がん治療中の口腔トラブルは非常によく見られますが、事前の準備と適切なケアで多くは予防・軽減できます。

治療の影響が永続し、生涯にわたる口腔ケアが必要になる場合もあります。大切なのは、がん治療チームと歯科医師が連携して口腔環境を守ることです。

うじな家庭医療クリニックでは、外来化学療法を受ける患者さんへの口腔ケア指導・歯科連携も含めたトータルサポートを行っています。治療中に口のことで気になることがあれば、遠慮なくスタッフにご相談ください。


参考文献: Maret D, Epstein JB, Vigarios E. Taking Care of Your Mouth During Cancer Treatment. JAMA Oncol. Published Online: March 5, 2026. doi:10.1001/jamaoncol.2025.6321


うじな家庭医療クリニック
〒734-0011 広島市南区宇品海岸
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