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乳がん治療後の妊娠を可能にする新たな選択肢

乳がんと診断されたとき、多くの方が治療だけでなく将来のことにも悩まれると思います。その中でも、「いつか子どもを持ちたい」という願いを抱く方も少なくありません。しかし、ホルモン療法を受けている間は妊娠が難しく、再発のリスクが不安で踏み出せない方も多いのではないでしょうか?

そんな患者さんにとって心強い研究結果が2023年に発表されました。この研究では、乳がん治療後にホルモン療法を一時的に中断して妊娠を目指した場合の安全性が詳しく検討されています。


POSITIVE試験が示したこと

この国際的な臨床試験は、妊娠を希望する42歳以下の女性が対象でした。以下の結果が明らかになっています:

  1. 乳がんの再発リスクは増えない
    ホルモン療法を一時中断した場合の3年間の乳がん再発率は8.9%で、治療を継続した方とほとんど差がありませんでした。この結果は「一時的な中断が安全である可能性」を示唆しています。

  2. 多くの女性が母親になる夢を実現
    参加者の74%が妊娠を経験し、そのうち63.8%が無事に赤ちゃんを出産しました。365人の赤ちゃんが誕生し、母親となった女性たちは希望をつかみ取りました。

  3. 治療再開も可能
    妊娠・出産後、多くの女性がホルモン療法を再開し、治療の継続と家族の夢を両立させています。


患者さんへ伝えたいこと

「乳がんを経験したから」と、妊娠を諦める必要はありません。この研究結果は、妊娠を希望する方に新たな選択肢を提示しています。ただし、個々の状況は異なりますので、担当の医師と十分に相談しながら計画を立てることが大切です。


希望をもって未来へ

乳がん治療後の人生は、新しいスタート地点です。この試験に参加された女性たちが示してくれた道は、同じ悩みを抱える多くの方々に勇気を与えるものです。妊娠を望む気持ちに寄り添い、可能性を一緒に探っていきましょう。

POSITIVE試験を経て、がん・生殖医療学会からも以下のステートメントが出されました。
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参考にされてください。