2025〜2026年に発表された複数の国際的な研究が、その考え方に新たな視点をもたらしています。すべての方に適用できるわけではありませんが、症状やがんの種類によっては、主治医と相談しながら選択肢として検討できる可能性があります。
乳がん治療後の「更年期症状」に悩んでいませんか?
「ホットフラッシュがひどくて夜も眠れない」「性交痛で夫婦関係がつらい」「関節が痛くてホルモン療法を続けられるか不安」——こうした声を、がんサバイバーシップ外来ではよくお聞きします。
乳がん治療(特にアロマターゼ阻害薬・化学療法)によって引き起こされる「治療誘発性閉経」は、自然閉経よりも症状が急激に現れ、重症化しやすいことが知られています。
代表的な症状には以下のものがあります。
これらの症状はQOL(生活の質)を大きく低下させるだけでなく、ホルモン療法の服薬継続率を下げ、再発リスク管理にも影響しかねません。
「ホルモン補充療法は乳がん患者に禁忌」は正しい?
長年、HRT(ホルモン補充療法)は乳がん既往者には「禁忌」とされてきました。その根拠となったのが2002年発表のWHI(女性健康イニシアチブ)試験です。
しかし、その後の長期追跡データや複数のメタ解析によって、状況はより複雑であることが明らかになってきました。2025年11月には、米国食品医薬品局(FDA)が「エビデンスの総体はHRTの益がリスクを上回る」として、乳がんに関する警告表示を削除するという大きな動きもありました。
ただし、研究によって使用したホルモン製剤の種類・用量が異なるため、「HRT全般が安全」という単純な結論ではありません。製剤の選択が重要です。
どのような方が対象になり得るの?
HRTの検討可否は、乳がんの種類・ステージ・症状の重症度・患者さんご本人の希望など複数の要因を組み合わせて判断します。一般的な目安として以下を参考にしてください(あくまでも個別の診断・相談が必要です)。
| 項目 | 検討しやすい条件 | より慎重な条件 |
|---|---|---|
| 受容体の種類 | 比較的検討可 ER陰性(トリプルネガティブ・HER2陽性など) |
慎重 ER陽性(高リスク例) |
| 病期・再発リスク | ステージI・再発リスク低 | ステージIII以上・再発既往 |
| 症状の重さ | 非ホルモン薬で改善せず、QOLが著しく低下 | 軽症・非ホルモン薬未試行 |
| 製剤の種類 | 天然型プロゲステロン+経皮エストラジオール 局所膣剤(低用量) |
合成プロゲスチン含有製剤 |
どのような流れで相談・検討するの?
うじな家庭医療クリニックのがんサバイバーシップ外来
当クリニックでは、がん薬物療法専門医・家庭医療専門医として、治療後の生活の質を支えるサバイバーシップケアに取り組んでいます。
「主治医には言いにくい」「症状がつらいけど我慢している」というご状況の方も、どうぞ気軽にご相談ください。がんの専門医と家庭医の両方の視点から、最新のエビデンスをもとに、お一人おひとりに合った情報提供と選択肢を一緒に考えます。
また、当院ではがんゲノム検査(多遺伝子パネル検査)やキャンサーサバイバーシップ外来との連携も行っており、治療後の継続的なフォローアップが可能です。
乳がん治療後の更年期症状、一度ご相談ください
広島市南区(宇品)のうじな家庭医療クリニックでは、がん薬物療法専門医によるサバイバーシップ外来を実施しています。オンライン予約またはお電話でお気軽にどうぞ。
予約・お問い合わせ【参考文献】
Bosserman LD, Dizon DS. Menopausal Hormone Therapy After Breast Cancer: Personalization, Not Prohibition. J Clin Oncol. 2025. DOI: 10.1200/JCO-25-03121
※本記事は上記論文をもとに作成した医療情報提供を目的としたコラムです。個々の治療方針については必ず主治医にご相談ください。
