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乳がん治療中のサプリ・民間療法は大丈夫?最新エビデンスを広島市南区の専門医が解説|うじな家庭医療クリニック

「サプリメントや漢方薬なら体に優しそう」「自然療法で免疫を上げたい」——乳がんの治療中や治療後にこうした思いを抱く患者さんやご家族は、決して少なくありません。そのお気持ちはよく理解できます。ただ、2026年3月に権威ある医学誌 JAMA Network Open に掲載された米国の大規模研究が、この問題に見逃せない視点を提供しています。この記事では、そのエビデンスをわかりやすく解説するとともに、「隠さず話せる場所」としての当クリニックの役割をご紹介します。

この記事でわかること

  • 補完代替医療(CAM)とはどんなものか
  • 米国215万人のデータが示した5年生存率の違い
  • 「標準治療+CAM併用」でも注意が必要な理由
  • CAMを担当医に話さないことのリスク
  • 症状緩和目的のCAMが有益な場合もあること
  • 広島市南区・うじな家庭医療クリニックへの相談方法

補完代替医療(CAM)とは

CAM(Complementary and Alternative Medicine:補完代替医療)とは、手術・化学療法・放射線・内分泌療法(ホルモン療法)・免疫療法といった標準的な医学的治療以外の方法で、健康の維持や病気への対処を目的とする療法の総称です。

  • 栄養補助食品・健康食品・サプリメント(ビタミンC・フコイダンなど)
  • 漢方薬・ハーブ療法・アーユルヴェーダ
  • 鍼灸・整体・マッサージ療法
  • マインドフルネス・瞑想・ヨガ・気功
  • 温熱療法・高濃度ビタミンC点滴・免疫療法(標準治療外)など

乳がん患者さんの約30%がCAMを何らかの形で使用しているという調査報告もあり、「病院で処方されたお薬に加えて、サプリも飲んでいる」という方は珍しくありません。

研究の概要:米国215万人のデータ

今回ご紹介するのは、米国イェール大学医学部のAyoadeらがJAMA Network Open(2026年3月)に発表したコホート研究です。

📋 研究の基本データ

データベース:全米がんデータベース(NCDB)——米国で新規診断されるがんの約70%を収録する大規模データ
対象:2011〜2021年に乳がんと診断された女性 2,157,219人
評価項目:5年生存率(Kaplan-Meier法+Cox比例ハザードモデルで調整)
発表誌:JAMA Network Open 2026;9(3):e260337

患者さんを以下の4つのグループに分けて比較しました。

治療グループ患者数割合
標準治療のみ2,106,665人97.6%
CAMのみ(標準治療なし)273人<0.1%
標準治療+CAM 併用568人<0.1%
無治療49,713人2.3%

結果①:CAMのみでは生存率が大幅に低下

4グループの5年生存率は、次のような結果でした。

治療グループ5年生存率死亡リスク(標準治療比)
標準治療のみ85.4%基準(1.0倍)
標準治療+CAM 併用81.2%1.45倍
CAMのみ60.1%3.67倍
無治療47.8%3.53倍

年齢・ステージ・人種・保険の種類など、生存率に影響しうる様々な要因を統計的に調整したうえでも、「CAMのみ」群の死亡リスクは標準治療群の約3.7倍で、「無治療」群とほぼ同等という結果でした。

⚠️ ここが重要なポイントです

現時点のエビデンスでは、乳がんの進行そのものを抑える力は標準治療にしかありません。CAMだけで乳がんを治療しようとした場合、無治療と同程度の予後になるリスクがあります。

結果②:「標準治療+CAM 併用」でも注意が必要な理由

「標準治療もきちんと受けながらCAMも加えるなら問題ないのでは?」——これが本研究で最も注目すべき発見でした。

標準治療+CAM 併用グループは、標準治療のみのグループと比べて、内分泌療法(ホルモン療法)や放射線治療の受療率が顕著に低下していました。

治療の種類(ステージII乳がん)標準治療のみ標準治療+CAM 併用
内分泌療法(ホルモン療法)65.2%40.7%
放射線治療59.5%36.6%
手術94.7%90.8%

その結果、標準治療+CAM 併用群の死亡リスクは、標準治療のみ群より1.45倍高くなっていました。

💡 この結果をどう読むか

CAM そのものの毒性が問題なのではありません。CAMに傾倒するあまり、再発予防に重要な内分泌療法や放射線治療を省略・中断してしまっているケースが多いことが、生存率低下の主因と考えられます。

内分泌療法は、ホルモン受容体陽性の乳がんでは再発リスクを大きく下げる治療です。「副作用がつらい」「自然に任せたい」という気持ちから中断したくなることは理解できますが、その判断は必ず担当医やがん専門家に相談した上で行うことが大切です。

CAMが役立つ場面もあります

この研究は「CAMはすべて危険」と主張しているわけではありません。別の多くの研究では、次のようなCAMアプローチが、症状の緩和やQOL(生活の質)の改善に有益であることが示されています。

エビデンスがある症状緩和目的のCAM(例)
  • 鍼治療:化学療法に伴う吐き気・倦怠感、ホットフラッシュの緩和
  • マッサージ療法:不安・疲労感の改善、QOL向上
  • マインドフルネス・瞑想:不眠・不安・うつ症状の改善、睡眠の質向上
  • ヨガ・気功:体力・精神的健康感の維持

これらは標準治療を補う(complement)形で使うことで有益な可能性があり、がん領域の診療ガイドラインへの組み込みも進んでいます。

大切なのは、「標準治療の代わりに」ではなく「標準治療に加えて、症状を和らげるために」という使い方です。

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「先生に言えていない」が一番のリスク

この研究で注目すべきもう一つの点は、NCDBに記録されたCAM使用率が全体の0.1%未満だったことです。一方、実態調査では乳がん患者さんの約30%がCAMを使用しているとされています。

この大きなギャップが示すのは、多くの患者さんが担当医にCAM使用を伝えていないという現実です。その背景には「医師に否定されそう」「専門外だと思われそう」といった遠慮があります。

しかしこれは危険です。サプリメントや健康食品の中には、抗がん剤や内分泌療法と相互作用を起こすものがあります。また、「CAMを始めたから化学療法を少し休もう」という判断が、主治医に伝わっていなければ防ぎようがありません。

🗣️ こんなことも気軽にご相談ください
  • 「フコイダンやビタミンCのサプリを飲んでいるが、治療に影響しないか」
  • 「内分泌療法(タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬)の副作用がつらくてやめたい」
  • 「鍼治療・整体と抗がん剤治療を並行してよいか」
  • 「断食・糖質制限で免疫を上げたいと思っている」
  • 「病院でのがん治療は続けながら、日常の体調管理をかかりつけ医に診てほしい」

正直に話してくださることが、最善の治療につながります。どんな小さな疑問も、遠慮なくお持ちください。

広島市南区・うじな家庭医療クリニックでできること

当クリニックでは、がん治療中・治療後の患者さんやご家族を対象としたがんサバイバーシップ外来を設けています。院長の瀬尾は、がん薬物療法専門医・家庭医療専門医・総合内科専門医の三つの専門資格を持ち、国立がん研究センター病院での腫瘍内科キャリアをベースに、地域での包括的ながんサポートを行っています。

がんサバイバーシップ外来でできること

  • 治療後の体調管理・再発予防のフォローアップ(血液検査・症状評価)
  • 内分泌療法(ホルモン療法)継続中の副作用マネジメント
  • サプリメント・CAMと標準治療の相互作用チェック
  • 病院専門医との連携(診療情報の共有・紹介状作成)
  • 心理的サポートと生活習慣のアドバイス
🏥 外来案内 がんサバイバーシップ外来について|うじな家庭医療クリニック

ご自宅で療養中の方へ:在宅・訪問診療

抗がん剤治療中で通院が難しい時期や、病状が進んで自宅での療養を選ばれる場合も、当クリニックはご自宅に伺う訪問診療・在宅医療で支えます。月200名以上の在宅患者さんを診ており、がん専門医としての知識を在宅の現場に活かしています。

🚗 訪問診療 在宅・訪問診療のご案内|うじな家庭医療クリニック

「治療のことを、病院以外にも相談できる場所がほしい」

がんサバイバーシップ外来・訪問診療・外来化学療法——
広島市南区・宇品エリアで、治療の全過程に寄り添います。

CAMについてのご相談も、どうぞ遠慮なくお声がけください。

まとめ

この記事のポイント
  • 乳がんの標準治療(手術・化学療法・放射線・内分泌療法・免疫療法)は、現時点で最もエビデンスのある治療法です
  • 米国215万人の大規模データで、「CAMのみ」は「無治療」とほぼ同等の死亡リスクであることが示されました(JAMA Network Open 2026)
  • 「標準治療+CAM 併用」でも、内分泌療法・放射線治療が省略されやすくなり、死亡リスクが1.45倍に上昇していました
  • 一方、鍼治療・マッサージ・マインドフルネスなど症状緩和目的のCAMは、標準治療を補う形で有益な可能性があります
  • 最も大切なのは、CAMの使用を担当医や信頼できるかかりつけ医に正直に伝え、標準治療を中断しないことです
  • 当クリニックはCAMへの関心を否定しません。一緒に「何が安全か・何が有益か」を考えましょう
監修
瀬尾 卓司(せお たくじ)
総合内科専門医・がん薬物療法専門医・家庭医療専門医
うじな家庭医療クリニック 院長(広島市南区)
元・国立がん研究センター病院 腫瘍内科

参考文献

Ayoade OF, Caturegli G, Canavan ME, Resio BJ, Berger ER, Boffa DJ. Use of Complementary and Alternative Medicine in the Management of Breast Cancer. JAMA Network Open. 2026;9(3):e260337. doi:10.1001/jamanetworkopen.2026.0337