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がん治療後の「疲れやすさ」はいつまで続く?回復を早める5つの方法

「治療は終わったはずなのに、なぜこんなに疲れるんだろう…」

そんな悩みを抱えているがんサバイバーの方は少なくありません。実は、がん治療後の疲れやすさ(がん関連疲労:CRF)は、がん患者さんの約80〜96%が経験する、非常に多い症状なのです。当院のがんサバイバー外来でも、最も多く寄せられる相談のひとつです。

今回は、この治療後の疲労がいつまで続くのか、そして回復を早めるための具体的な5つの方法について、医師の視点から詳しく解説します。


がん治療後の疲労、実際にいつまで続くの?

疲労のピークと回復期間

抗がん剤治療による疲労は、一般的に以下のような経過をたどります:

  • ピーク期間:抗がん剤投与後2〜3日が最もつらい時期
  • 急性期:投与後3〜14日頃まで症状が続く
  • 慢性期:治療を重ねるごとに疲労感が蓄積しやすくなる

重要なポイントは、治療が終了してからも症状が長期間持続することがあるという点です。研究によれば、がんサバイバーの30〜60%が慢性的な疲労を経験しており、中には数ヶ月から数年続くケースもあります。

なぜ治療後も疲れが続くのか?

治療後の疲労には、以下のような複数の要因が関係しています:

  1. がん治療による体力の消耗
  2. 貧血や栄養状態の悪化
  3. 治療による筋力低下
  4. 睡眠障害やストレス
  5. 炎症性サイトカインの影響
  6. 男性ホルモンの低下(特に男性患者)

つまり、単純に「休めば治る」疲れではなく、体全体のバランスが崩れている状態なのです。


回復を早める5つの具体的な方法

ここからは、医学的根拠に基づいた疲労回復のための実践的な方法をご紹介します。

【方法1】適度な運動療法を取り入れる

「疲れているのに運動?」と思われるかもしれませんが、運動療法は最も効果が証明されている対処法です。

推奨される運動

  • 有酸素運動:ウォーキング、自転車こぎ、軽いジョギング
  • 頻度:週3〜5日、1回20〜30分(最初は10分からでもOK)
  • 強さ:「会話はできるが少し息切れする」程度
  • 筋力トレーニング:週2〜3日(1日おき)の軽い筋トレ

運動のメリット

✓ 筋力の維持・改善
✓ 疲労感の軽減
✓ 睡眠の質の向上
✓ 気分の改善
✓ 生活の質(QOL)の向上

重要:運動を始める前に必ず主治医に相談し、体調に合わせて無理のない範囲で行いましょう。


【方法2】質の高い睡眠を確保する

睡眠は疲労回復の基本中の基本です。

理想的な睡眠習慣

  • 睡眠時間:1日7〜8時間を目安に
  • 就寝・起床時刻を一定に:体内リズムを整える
  • 日中の明るい光を浴びる:体内時計をリセット
  • 寝る前のリラックスタイム:スマホやテレビを控える
  • 昼寝は短めに:30分以内にとどめる

研究では、明るい光を浴びることで化学療法中の患者さんの疲労が改善することや、うつ症状の改善、QOLの向上につながることが分かっています。


【方法3】バランスの良い栄養摂取

体の回復には適切な栄養が不可欠です。

意識したい栄養ポイント

  • たんぱく質をしっかり:筋肉量の維持に必要(肉、魚、卵、大豆製品)
  • 野菜・果物を多めに:ビタミン・ミネラル・抗酸化物質の補給
  • 鉄分補給:貧血予防(レバー、赤身肉、ほうれん草など)
  • 食物繊維を十分に:腸内環境を整える
  • こまめな水分補給:脱水予防

避けたいこと

✗ 極端な食事制限
✗ 偏った食事
✗ 過度な飲酒

栄養状態が気になる方は、当院の栄養相談もご活用ください。


【方法4】エネルギー管理と活動のバランス

「頑張りすぎない」ことも重要な戦略です。

エネルギー温存のコツ

  • 優先順位をつける:本当に必要なことに集中
  • 活動と休息のバランス:無理せず、疲れたら休む
  • 周囲の助けを借りる:家族や友人にサポートを頼む
  • 午前中に活動を:多くの方が午前中に調子が良い傾向
  • 「完璧」を求めない:できる範囲でOK

「ベッドで寝すぎる」のも逆効果です。適度に体を動かしながら、無理のないペースを見つけましょう。


【方法5】専門家のサポートを受ける

一人で悩まず、専門的なサポートを活用することが大切です。

活用できる専門サポート

  • がんサバイバー外来:治療後の悩みに特化した外来
  • リハビリテーション科:運動療法の専門的指導
  • 栄養士:個別の食事指導
  • 心理士・カウンセラー:ストレスや不安のケア
  • がん専門運動指導士:安全で効果的な運動プログラム

医療者に伝えるべきこと

✓ 疲労の程度(日常生活への影響度)
✓ いつから続いているか
✓ 貧血や感染症などの他の症状
✓ 睡眠状況
✓ 気分の落ち込みの有無

これらの情報をもとに、貧血の治療や、うつ症状への対応など、原因に応じた治療を行うことができます。


まとめ:あきらめないで、サポートがあります

がん治療後の疲労は、多くのサバイバーが経験する正常な反応ですが、決して「我慢するしかない」症状ではありません

今日からできること

  1. ✅ 1日10分のウォーキングから始めてみる
  2. ✅ 就寝・起床時刻を決めて生活リズムを整える
  3. ✅ バランスの良い食事を心がける
  4. ✅ 無理せず、助けを求める
  5. ✅ がんサバイバー外来など専門家に相談する

当院のがんサバイバー外来では、治療後の疲労に対する包括的なサポートを提供しています。運動指導、栄養相談、心理サポート、必要に応じた医学的治療まで、あなたの回復を多角的にサポートします。

「治療は終わったけど、体がついていかない…」そんな悩みを抱えている方、ぜひ一度ご相談ください。一緒に、あなたらしい生活を取り戻すお手伝いをさせていただきます。


参考文献

  • 国立がん研究センター「がんとリハビリテーション医療」
  • 日本癌治療学会「がん診療ガイドライン」
  • 医学書院「がん関連倦怠感へのアプローチ」

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