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「抗がん剤治療が終わったのに、以前のような元気が出ない」 「体が重くて、仕事や趣味に意欲が湧かない」
がんの治療を乗り越えた後、このようなお悩みを抱えている男性は少なくありません。これは単なる「体力の衰え」や「精神的な疲れ」ではなく、「男性ホルモン(テストステロン)の低下」が原因である可能性があります。
今回のブログでは、がん相談外来を併設する当院が、がんサバイバーの方における男性ホルモン補充の重要性について解説します。
1. 抗がん剤・放射線治療と男性ホルモンの関係
がんの治療(化学療法や放射線療法)は、がん細胞を攻撃する一方で、健康な細胞にも影響を与えます。特に精巣にある「ライディッヒ細胞」というテストステロンを作る工場がダメージを受けると、ホルモンの産生量が著しく低下することがあります。
これを「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」と呼びますが、がん治療によってこれが引き起こされる、あるいは加速されることがあるのです。
2. ホルモンが低下するとどうなるか?(主な症状)
テストステロンが不足すると、心身に以下のようなサインが現れます。
慢性的な倦怠感(Cancer-Related Fatigue)
意欲や集中力の低下、抑うつ状態
筋肉量の減少と、お腹周りの脂肪増加
睡眠障害や関節の痛み
これらの症状は、がんの再発を不安視する精神的ストレスと混同されがちですが、血液検査でホルモン値を測ることで、医学的に原因を特定できる場合があります。
3. 男性ホルモン補充療法(TRT)のメリットと安全性
「がんを経験した後にホルモンを足しても大丈夫?」と心配される方もいらっしゃるでしょう。 現在、多くの研究により、前立腺がんなどを除き、適切な医師の管理下であればテストステロン補充は安全に行え、QOL(生活の質)を劇的に改善させることが証明されています。
当院では、定期的なPSA検査(前立腺がんマーカー)や血液検査を行いながら、安全性を最優先に治療を行います。
4. 当院でのアプローチ
うじな家庭医療クリニックでは、がん相談外来を通じて、患者様お一人おひとりの治療歴に合わせたケアを提案しています。
保険診療での対応: 数値が一定基準を下回る場合、保険診療での治療が可能です。
トータルケア: 併設するKYPROS(瘦身美容)とも連携し、ホルモンケアに合わせた筋力回復や体組成管理もサポートいたします。
「もう一度、自分らしく活動的な毎日を取り戻したい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
参考文献 (PubMedより抜粋)
ブログの信頼性を担保するための医学的根拠です(診察時の資料としてもご活用ください)。
抗がん剤による性腺機能低下のメカニズムについて
Meistrich ML. Effects of chemotherapy and radiotherapy on spermatogenesis in humans. Fertil Steril. 2013;100(5):1180-6. (抗がん剤が精巣機能に与える影響についての包括的なレビュー)
がんサバイバーの倦怠感とテストステロンの関係
Madersbacher S, et al. Late effects of chemotherapy and radiotherapy on gonadal function. Endocr Relat Cancer. 2003;10(4):529-35. (化学療法後の性腺機能低下が患者の長期的なQOLに与える影響について)
テストステロン補充療法の安全性と有効性
Bhasin S, et al. Testosterone Therapy in Men With Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2018;103(5):1715-1744. (性腺機能低下症に対するテストステロン療法の国際的なガイドライン)
がん関連倦怠感(CRF)に対するホルモン補充の影響
Del Fabbro E, et al. Testosterone replacement for fatigue in hypogonadal ambulatory patients with advanced cancer: a pilot study. J Palliat Med. 2013;16(10):1203-10. (がん患者の倦怠感に対するテストステロン補充の有効性に関する試験)