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がん患者さんこそワクチン接種が重要な理由
がん治療中の患者さんは、免疫力が低下しているため感染症にかかりやすく、重症化しやすい傾向があります。米国臨床腫瘍学会(ASCO)の2024年ガイドラインでは、ワクチン接種の最適化をがん患者ケアの重要な要素として位置づけています。
感染症がもたらすリスク:
- 治療の中断や延期
- 入院による生活の質の低下
- 重症化による生命のリスク
- 治療効果への悪影響
主要ワクチンの推奨時期一覧表
ワクチンの種類 | 接種推奨時期 | 治療中の接種 | 重要度 |
---|---|---|---|
季節性インフルエンザ | 治療開始2-4週間前が理想 | 可能(不活化) | ⭐⭐⭐ |
新型コロナウイルス | 最新の推奨に従う | 可能(不活化) | ⭐⭐⭐ |
肺炎球菌 | 治療開始2-4週間前が理想 | 可能(不活化) | ⭐⭐⭐ |
帯状疱疹(不活化) | 治療開始2-4週間前が理想 | 可能(不活化) | ⭐⭐ |
B型肝炎 | リスク要因がある場合 | 可能(不活化) | ⭐⭐ |
HPV(ヒトパピローマウイルス) | 年齢・条件による | 可能(不活化) | ⭐⭐ |
破傷風・ジフテリア・百日咳 | 標準スケジュール | 可能(不活化) | ⭐ |
RSウイルス | 高齢者・リスクがある場合 | 可能(不活化) | ⭐ |
ワクチン接種のベストタイミング
治療前の理想的なタイミング
ASCOは、がん治療開始の2〜4週間前のワクチン接種を推奨しています。この期間に接種することで、免疫系が正常に機能している状態で抗体を作ることができます。
治療前チェックリスト:
- ✅ 初回診察時にワクチン接種歴を確認
- ✅ 不足しているワクチンを特定
- ✅ 治療スケジュールとの調整
- ✅ 優先度の高いものから接種計画を立てる
治療中の接種について
化学療法、免疫療法、ホルモン療法、放射線治療、手術を受けている患者さんも、不活化ワクチンであれば治療中または治療後に安全に接種できます。
重要ポイント:
- ⚠️ 生ワクチンは原則として避ける(麻疹・風疹・水痘など)
- ✅ 不活化ワクチンは治療中でも接種可能
- 💡 治療サイクルとの最適なタイミングについては主治医に相談
特殊な治療を受ける場合の注意点
造血幹細胞移植(HSCT)後
移植後6〜12ヶ月経過してから完全な再接種が推奨されます。生ワクチンは移植後最低2年間は延期すべきです。
接種スケジュール:
- 移植後3ヶ月:COVID-19、インフルエンザ、肺炎球菌ワクチン可能
- 移植後6-12ヶ月:完全な再接種プログラム開始
- 移植後24ヶ月以降:生ワクチン検討可能(免疫能評価後)
CAR-T細胞療法・B細胞除去療法後
これらの治療を受けた患者さんは、特別な再接種プロトコルが必要です。治療後の免疫状態を評価しながら、段階的にワクチン接種を行います。
COVID-19ワクチンについて
COVID-19ワクチンはがん患者さんを重症化や入院から守る効果が証明されています。
推奨事項:
- 最新の推奨スケジュールに従って接種
- 免疫反応が弱い治療を受けている場合は、2ヶ月間隔での追加接種を強く推奨
- COVID-19感染後は2-3ヶ月後に接種を延期
- 治療サイクル中の特定のタイミング推奨なし
インフルエンザワクチンについて
毎年の季節性インフルエンザワクチン接種は、がん患者さんにとって特に重要です。
効果を高めるために:
- 高用量またはアジュバント添加ワクチンの検討
- 適切なタイミングでの接種
- 必要に応じて2回接種の検討
肺炎球菌ワクチンについて
肺炎はがん患者さんにとって重大な感染症です。肺炎球菌ワクチンは肺炎予防の重要な手段です。
接種パターン:
- 年齢と状態に応じた適切なワクチンタイプの選択
- 必要に応じて複数回の接種
帯状疱疹ワクチンについて
がん患者さんは帯状疱疹のリスクが高まります。不活化ワクチン(シングリックス®)の使用が推奨されます。
重要:
- 生ワクチン(ビケン®)は避ける
- 不活化ワクチンを2回接種
ご家族・同居者のワクチン接種も重要です
ASCOは、がん患者さんの家族や密接な接触者全員が推奨ワクチンを最新の状態に保つことを強く推奨しています。
家族ができること:
- ✅ 季節性ワクチン(インフルエンザ、COVID-19)を必ず接種
- ✅ 標準的な予防接種スケジュールを遵守
- ✅ 生ワクチン接種後は一定期間患者さんとの接触に注意
主治医との相談ポイント
ワクチン接種について主治医に相談する際は、以下の点を確認しましょう:
- 現在の免疫状態:治療による免疫抑制の程度
- 治療スケジュール:最適な接種タイミング
- 優先順位:どのワクチンから接種すべきか
- 禁忌事項:避けるべきワクチンはあるか
- 副反応対策:予想される副反応と対処法
よくある質問(FAQ)
Q1: ワクチンの副反応が心配です
A: 一般的な副反応(発熱、倦怠感など)は接種後数日以内に軽快します。がん治療の副作用との区別が難しい場合は、必ず医療機関に相談してください。
Q2: ワクチンの効果は通常の人と同じですか?
A: がん治療中は免疫反応が弱まる可能性があります。そのため、追加接種や抗体検査が推奨される場合があります。
Q3: 治療が終わってからどれくらいでワクチンを打てますか?
A: 固形がんで化学療法を受けた場合、最後の治療から3ヶ月以上経過し、寛解状態にあることが一般的な目安です。
Q4: 検査のスケジュールとワクチン接種のタイミングは?
A: ワクチン接種により一時的にリンパ節が腫れたり、血液検査値が変化したりする可能性があります。定期検査のスケジュールと調整が必要な場合があるため、主治医に相談してください。
うじな家庭医療クリニックでの専門サポート
がん相談外来のご案内
当院では、がん患者さんとそのご家族を対象とした「がん相談外来」を開設しています。
こんなお悩みに対応します:
- 🏥 ワクチン接種計画の立案と実施
- 📋 がん治療施設との連携・調整
- 💊 感染予防の総合的なアドバイス
- 👨👩👧👦 ご家族のワクチン接種相談
- 📞 治療中の体調管理サポート
当院の特徴
✅ 家庭医療の専門性:がん治療と並行した総合的な健康管理
✅ 個別対応:お一人おひとりの治療状況に合わせたワクチン接種計画
✅ 連携体制:がん治療施設との緊密な連携による安心の医療提供
✅ アクセス良好:広島市内からも通いやすい立地
受診の流れ
- お電話またはWebで予約
初診の方も予約可能です - 問診・現状確認
がん治療の状況、ワクチン接種歴を確認 - 個別プラン作成
最適な接種スケジュールをご提案 - ワクチン接種・フォローアップ
安全な環境での接種と継続的なサポート
ご予約・お問い合わせ
📞 お電話:082-256-4500
🌐 Web予約:https://patient.digikar-smart.jp/institutions/d36407f8-f396-4a45-a806-7d9bbf98d0b0/reserve
📍 所在地:広島県広島市南区宇品東6-2-47
🕐 診療時間:月~土:9:00~12:30, 13:30~17:30
💡 初めての方へ
「ブログを見た」とお伝えいただくとスムーズです。
がん治療施設からの診療情報提供書があればご持参ください。
まとめ:がん治療とワクチン接種の両立
ワクチン接種は、がん治療中の患者さんを感染症から守る重要な予防手段です。以下のポイントを押さえましょう:
5つの重要ポイント:
- 早期の計画立案:診断時からワクチン接種を含めた感染症対策を開始
- 治療前の接種が理想:可能であれば治療開始2-4週間前に接種
- 不活化ワクチンは治療中でも安全:化学療法中でも多くのワクチンは接種可能
- 生ワクチンは原則避ける:特に免疫抑制状態では危険
- 家族全員での予防:周囲の人のワクチン接種も患者さんを守る
医療機関での相談を
この記事の情報は一般的なガイドラインに基づいていますが、個々の患者さんの状況によって最適な判断は異なります。
相談先:
- 🏥 がん治療施設の主治医(腫瘍内科医)
- 🏥 うじな家庭医療クリニック がん相談外来
- 💊 かかりつけ薬局の薬剤師
適切なワクチン接種により、感染症のリスクを減らし、安心してがん治療に専念できる環境を整えましょう。
まずはお気軽にご相談ください。うじな家庭医療クリニックが、あなたのがん治療を総合的にサポートします。
参考資料・関連リンク
公式ガイドライン
- ASCO Clinical Practice Guideline: Vaccination of Adults With Cancer (2024)
- 日本臨床腫瘍学会(JSMO)公式サイト
- 日本癌治療学会・日本癌学会・日本臨床腫瘍学会 合同 COVID-19ワクチンQ&A
行政機関・公的機関
患者さん向け情報
ワクチン関連情報
記事更新日: 2025年10月20日
免責事項: この情報は教育目的で提供されており、医学的助言の代わりになるものではありません。ワクチン接種については必ず医療専門家にご相談ください。
監修: うじな家庭医療クリニック