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がん治療の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を受ける際に知っておきたい6つのポイント|広島市南区宇品 うじな家庭医療クリニック

はじめに

がん治療において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI:Immune Checkpoint Inhibitor)は画期的な治療法として注目されています。しかし、この治療の効果を最大限に引き出すためには、投与のタイミングや日常生活での注意点など、知っておくべき重要なポイントがあります。

広島市南区宇品のうじな家庭医療クリニックでは、がん相談外来を通じて、患者様一人ひとりに最適ながん治療をサポートしています。今回は、免疫チェックポイント阻害薬治療を受ける際に押さえておきたい6つの重要なポイントをご紹介します。

※まだ研究段階のものもあります。主治医と相談するようにお願いします。


Point 1:投与時間を知る – 時間帯が治療効果に影響

11時〜15時までの初回投与が推奨される理由

最新の研究(2025年ASCO発表)によると、免疫チェックポイント阻害薬の初回投与を午前11時から午後3時の間に行うことで、以下のような効果が報告されています:

  • 生存期間の延長が期待できる
  • ただし、副作用は増える傾向がある
  • 日本を含む国際的なデータで効果が確認されている

体内時計(サーカディアンリズム)と免疫機能には深い関係があり、投与時間によって治療効果が変わる可能性があることが分かってきました。

当クリニックでのアドバイス

投与スケジュールについては、主治医と相談しながら最適な時間帯を選択することが重要です。


Point 2:胃薬に注意 – PPIとの併用は要注意

プロトンポンプ阻害薬(PPI)が治療効果を下げる可能性

免疫チェックポイント阻害薬治療中に注意が必要な薬の一つが**プロトンポンプ阻害薬(PPI)**です:

  • 併用すると免疫療法の効果が減少する可能性
  • 腎臓への障害リスクが増える可能性
  • 胃薬が必要な場合はH2ブロッカーの使用を推奨

PPIは胃酸を強力に抑える薬で、逆流性食道炎などでよく処方されますが、腸内環境に影響を与え、免疫機能を低下させる可能性が指摘されています。

代替案としてのH2ブロッカー

胃の不快感がある場合は、H2ブロッカー(ファモチジンなど)の使用を主治医に相談することをお勧めします。


Point 3:mRNAコロナワクチン接種のメリット

治療開始100日前からの接種を考慮

意外に思われるかもしれませんが、mRNAコロナワクチンが免疫チェックポイント阻害薬の効果を高める可能性が報告されています:

  • ICIの治療効果が高まる可能性
  • 3年生存率が約2倍に改善したとの報告
  • 感染症対策としても有効

がん治療中は免疫力が低下しやすいため、感染症予防は非常に重要です。ワクチン接種は治療効果向上と感染予防の両面でメリットがあります。

接種タイミング

治療開始の100日前から接種を検討することが推奨されています。ただし、個々の状態によって適切なタイミングは異なりますので、必ず主治医と相談してください。


Point 4:適切な抗生剤投与 – 腸内細菌への配慮

治療開始60日前の抗生剤使用は要注意

抗生物質の使用は腸内細菌叢(腸内フローラ)に大きな影響を与えます:

  • 治療開始60日前の抗生剤使用は注意が必要
  • 腸内細菌の変化が免疫機能に影響
  • 奏効率・生存率が悪化する傾向
  • 必要な場合は狭域抗菌薬(特定の菌のみに効く抗生物質)の使用を推奨

2024年7月にNature誌に発表された研究でも、抗生物質の使用が免疫療法の効果を低下させる可能性が指摘されています。

クリニックでの対応

当クリニックでは、抗生物質の処方が必要な場合、患者様のがん治療スケジュールを考慮し、腸内環境への影響が少ない薬剤選択を心がけています。


Point 5:効果を高める食事 – 腸内環境を整える

食物繊維の重要性

免疫チェックポイント阻害薬の効果を高めるために、食事内容も重要な要素です:

  • 1日20gの食物繊維摂取を目標に
  • 腸内細菌叢の多様性が治療効果に影響
  • ICIへの反応率が向上する可能性

プロバイオティクスサプリメントには注意

意外なことに、プロバイオティクス(乳酸菌サプリメントなど)の摂取は悪影響をもたらす可能性が指摘されています。サプリメントよりも、自然な食品から多様な食物繊維を摂取することが推奨されます。

推奨される食品

  • 野菜類(特に葉物野菜、根菜)
  • 果物
  • 全粒穀物
  • 豆類
  • 海藻類

これらの食品から自然に食物繊維を摂取することで、腸内細菌の多様性を保つことができます。


Point 6:まとめ – 時間・食事・薬を意識することで効果が変わる

免疫チェックポイント阻害薬治療の効果を最大限に引き出すためには:

  1. 投与時間(11時〜15時)に注意する
  2. **胃薬(特にPPI)**の使用を見直す
  3. mRNAワクチン接種を検討する
  4. 抗生物質の使用を慎重に判断する
  5. 食物繊維を豊富に含む食事を心がける

これらの要素に気を付けることで、治療の「効き方」が変わる可能性があります。


うじな家庭医療クリニック がん相談外来のご案内

広島市南区宇品で専門的ながん相談を

当クリニックのがん相談外来では、免疫チェックポイント阻害薬治療を含む、がん治療全般についてのご相談を承っています。

こんな方にお勧めです

  • がん治療の選択肢について詳しく知りたい
  • 現在の治療で不安や疑問がある
  • 副作用への対処法を相談したい
  • セカンドオピニオンが欲しい
  • 治療と日常生活の両立について相談したい

当クリニックの特徴

  • 家庭医療の視点から総合的なサポート
  • 最新の医学情報に基づいたアドバイス
  • 患者様一人ひとりに寄り添った丁寧な診療
  • 地域に根ざした継続的なケア

ご予約・お問い合わせ

免疫チェックポイント阻害薬治療について、ご不明な点やご心配なことがございましたら、お気軽にご相談ください。

うじな家庭医療クリニック
住所:広島市南区宇品
診療科:家庭医療科、がん相談外来

※治療方針の変更や新しい治療の開始については、必ず現在の主治医とご相談の上、判断してください。


参考文献

  • 2025 ASCO Annual Meeting「非小細胞肺がん患者における免疫化学療法の投与時間と予後の関連に関する無作為化試験」
  • Cancers 2025「がん患者における免疫チェックポイント阻害薬治療とプロトンポンプ阻害薬使用の影響」
  • Cancer「mRNA COVID-19ワクチンが免疫療法の腫瘍効果を高める」
  • npj Precision Oncology 2024「化学療法および免疫療法を受ける肺がん患者における抗生物質と予後の関連」
  • Science 2021「食物繊維とプロバイオティクスが腸内微生物叢とメラノーマ免疫療法反応に与える影響」

最終更新日:2025年10月

カテゴリ:がん治療、免疫療法、免疫チェックポイント阻害薬、広島市南区宇品、うじな家庭医療クリニック

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