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【2025年注目の医学研究9選】〜JAMA「Research of the Year 2025」より〜

こんにちは。うじな家庭医療クリニック院長の瀬尾です。

今回は、世界で最も権威ある医学雑誌の一つ「JAMA(米国医師会雑誌)」が選んだ「2025年の研究トップ9」をご紹介します。心臓病から認知症予防、がん治療まで、私たちの健康に直結する最新の研究成果をわかりやすく解説いたします。

1. GLP-1薬が心不全の死亡リスクを40%以上低減

【研究のポイント】セマグルチド(オゼンピック®)やチルゼパチド(マンジャロ®)といったGLP-1受容体作動薬が、肥満を伴う心不全患者において、心不全による入院や死亡リスクを40%以上低減させることが示されました。

【当院からのコメント】糖尿病治療薬として知られるこれらの薬剤が、心臓を守る効果も持つことが明らかになりました。肥満や糖尿病をお持ちの方で心臓が気になる方は、ぜひご相談ください。

2. 帯状疱疹ワクチンが認知症リスクを低減

【研究のポイント】オーストラリアの10万人以上を対象とした研究で、帯状疱疹ワクチンを接種した人は、認知症発症リスクが約2ポイント低いことが判明しました。

【当院からのコメント】帯状疱疹予防だけでなく、認知症予防の可能性も示唆されています。50歳以上の方には帯状疱疹ワクチンの接種をお勧めしています。当院でも接種可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

3. 医療AIの評価研究はまだ不十分

【研究のポイント】医療分野でのAI(大規模言語モデル)の評価研究500件以上を分析した結果、実際の患者データを使用した研究はわずか5%に過ぎず、評価方法が不十分であることが明らかになりました。

【当院からのコメント】AIの医療活用は今後も進みますが、現時点では「人間の医師による判断」が依然として重要です。当院では最新技術を取り入れつつも、患者さん一人ひとりに寄り添った診療を心がけています。

4. 新生児ゲノム検査で治療可能な疾患を早期発見

【研究のポイント】ニューヨークの4,000人の新生児を対象にした「GUARDIAN研究」で、ゲノム解析により従来の新生児スクリーニングでは見逃される治療可能な疾患(QT延長症候群、ウィルソン病など)を92%で発見できることが示されました。

【当院からのコメント】遺伝子検査技術の進歩により、より早い段階で治療介入が可能になる時代が近づいています。お子様の健康に関するご相談もお受けしています。

5. 構造化された生活習慣改善プログラムが認知機能を向上

【研究のポイント】US POINTER試験」では、運動、食事、社会活動、認知トレーニングを組み合わせた構造化プログラムを受けた群で、自己管理群と比較して有意な認知機能の改善が認められました。認知症リスク遺伝子(APOE ε4)保有者にも同様の効果がありました。

【当院からのコメント】認知症予防には「運動」「食事」「社会とのつながり」が重要です。生活習慣についてのご相談も承っております。

6. 急性脳損傷では積極的な輸血が予後を改善

【研究のポイント】TRAIN試験」により、急性脳損傷患者ではヘモグロビン9g/dL未満で輸血を開始する「積極的輸血戦略」の方が、7g/dL未満で開始する「制限的輸血戦略」よりも神経学的予後が良好であることが判明しました。

【当院からのコメント】脳への酸素供給が重要な状況では、適切なタイミングでの輸血が回復に大きく影響することが示されました。

7. 低リスク乳がん(DCIS)では経過観察も選択肢に

【研究のポイント】COMET試験」では、低リスクの非浸潤性乳管がん(DCIS)において、手術を行わず定期的な経過観察を行う「アクティブモニタリング」が、従来の手術治療と同等の安全性を持つことが示されました。経過観察群では乳房切除術を受けた割合が2%未満に抑えられました。

【当院からのコメント】すべてのがんが手術を必要とするわけではありません。当院では患者さんと十分に話し合いながら、最適な治療方針を一緒に考えます。がん治療の相談もお気軽にどうぞ。

8. HIV患者向けの新しいB型肝炎ワクチンが高い効果

【研究のポイント】従来のB型肝炎ワクチンに反応しなかったHIV患者を対象とした「BEe-HIVe試験」で、新しいアジュバント(CpG)を使用したワクチンが99%の防御率を達成しました(従来型は81%)。

【当院からのコメント】免疫機能が低下している方でも効果的なワクチンの開発が進んでいます。ワクチン接種についてご不明な点があればご相談ください。

9. 治療抵抗性高血圧に新薬ロルンドロスタットが有効

【研究のポイント】複数の降圧薬を服用しても血圧がコントロールできない「治療抵抗性高血圧」に対し、新しいアルドステロン合成酵素阻害薬「ロルンドロスタット」が有効であることが「Launch-HTN試験」で示されました。6週間で収縮期血圧が約17mmHg低下しました。

【当院からのコメント】血圧がなかなか下がらないとお悩みの方に希望をもたらす研究です。高血圧の管理についてもお気軽にご相談ください。

まとめ

2025年の医学研究は、「予防医学の重要性」「過剰治療の回避」「個別化医療の進展」というテーマが目立ちました。特に、ワクチンによる認知症予防の可能性や、低リスクがんへの経過観察という選択肢は、患者さんのQOL(生活の質)を重視した新しい医療の方向性を示しています。

当院では、このような最新の医学知見を取り入れながら、地域の皆様の健康を守るお手伝いをしています。健康に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。