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【最新研究】脂肪肝炎(MASH)に新たな治療選択肢 ― セマグルチドがもたらす希望

近年急増中の「MASH」とは?

近年、肥満や糖尿病と関連して増加している肝疾患に「MASH(代謝異常関連脂肪肝炎)」があります。これは、以前はNASH(非アルコール性脂肪肝炎)と呼ばれていたもので、肝臓に脂肪がたまり、炎症や線維化(硬化)を引き起こし、最終的には肝硬変や肝がんに至る可能性もある病気です。

日本人を含むアジアでも急速に増加しており、健康診断で肝機能異常を指摘される方の中にも、この病気が隠れているケースがあります。


セマグルチドとは?― 糖尿病治療薬から肝臓病治療へ

セマグルチドは、GLP-1受容体作動薬というタイプの薬で、元々は2型糖尿病や肥満症の治療薬として用いられていました。注目されている理由は、血糖コントロールだけでなく、体重減少、心血管病リスクの改善といった多面的な健康効果があることです。

そして今、セマグルチドが「肝臓病」にも効果を示す可能性が示されました。


【注目の論文】セマグルチドがMASHを改善! ― NEJM掲載の第3相試験より

2025年6月に『New England Journal of Medicine』に掲載された国際共同試験(ESSENCE試験)では、肝生検によりMASHと診断された1197人のうち、初回800名を対象に、週1回の皮下注射セマグルチド(2.4mg)または偽薬(プラセボ)を72週間投与した中間解析の結果が報告されました。

主な成果は以下の通りです:

  • 脂肪肝炎の解消(線維化悪化なし):セマグルチド群で62.9%、プラセボ群で34.3

  • 肝線維化の改善(脂肪肝炎悪化なし):セマグルチド群で36.8%、プラセボ群で22.4

  • 体重減少:セマグルチド群で平均10.5%、プラセボ群で2.0%

    副作用としては、吐き気・下痢などの胃腸症状が多くみられましたが、重篤な有害事象の頻度は両群で同程度でした。


なぜ注目されるのか?― 肝臓と全身の「代謝改善」を同時に

この研究が注目される理由は、「肝臓病の改善」と「代謝異常の改善」が同時に得られる点です。MASHは単なる肝臓病ではなく、糖尿病や心血管疾患と密接に関係しており、治療には体重管理・血糖コントロール・生活習慣改善が不可欠です。

セマグルチドは、これら複数の要因にアプローチできる薬として、「統合的な治療」の可能性を秘めています。


うじな家庭医療クリニックの取り組み

当院では、脂肪肝やMASHに関心のある患者さまに対し、以下のようなサポートを提供しています。

  • 肝機能異常のスクリーニング

  • 糖尿病・肥満・脂質異常などの包括的診療

  • 管理栄養士による食事・生活指導

  • 必要に応じた専門機関との連携(肝生検、画像診断など)

また、GLP-1作動薬(オゼンピックやマンジャロなど)による治療をご希望の方には、適応や副作用、費用なども含め丁寧にご説明いたします。


MASHは「予防・改善」が可能な病気です

早期に見つけ、しっかり治療を行えば、MASHは進行を止められる病気です。健康診断でALTやASTの値が高かった方、メタボリック症候群を指摘された方、糖尿病・肥満をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。


📍 広島市南区のうじな家庭医療クリニックでは、MASHや脂肪肝の予防・治療に取り組んでいます。