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「糖尿病の方の6割に脂肪肝!?見逃されがちな“MASLD”のリスクと対策」

はじめに

近年、メタボや糖尿病の患者さんに増えている「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」。これは従来の非アルコール性脂肪肝(NAFLD)に代わる新しい名称で、2型糖尿病(T2DM)の方にとって見逃せない合併症です。

今回紹介するスウェーデンの研究によると、T2DMの方のなんと59%にMASLDが認められ、7%には進行した肝線維化が疑われました。


MASLDとは?糖尿病患者の“沈黙の疾患”

MASLDは肝臓に脂肪がたまり、進行すると肝硬変や肝がんにもつながる病態です。特に糖尿病との併発は進行を早めるとされ、欧州や米国の最新ガイドラインでは、糖尿病患者に対する肝疾患のスクリーニングが推奨されています。


実際の研究データから読み解くリスク

論文によると:

  • MASLDの有病率は59%

  • BMI30以上の肥満者の81%がMASLD該当

  • 進行性肝線維化(≧10kPa)が疑われたのは7%

  • 肥満があると肝線維化リスクが約8倍に上昇

  • MASLDの方は内臓脂肪、皮下脂肪、筋肉内脂肪も増加

つまり、見た目の体型だけでは分からない「隠れ肥満」や筋肉内脂肪の蓄積が、肝疾患リスクと関係しているのです。


MASLDと心臓の関係にも注意

さらに注目すべきは、MASLD患者における**左心室リモデリング(心臓の形態変化)**がMRI検査で確認されたことです。これは将来の心不全リスクにも関わる可能性があり、糖尿病・肥満・肝疾患・心疾患が「つながっている」ことを示唆しています。


どんな方に検査をおすすめする?

以下のような方には、肝臓エコーや血液検査(FIB-4スコア)などのスクリーニングをおすすめします:

  • BMIが25以上(特に30以上)の糖尿病患者

  • HbA1cが高めの方

  • ASTやALTが高めの方

  • 高血圧・高脂血症もある方

当院では糖尿病の定期診察時に、MASLDのリスク評価や肝臓エコーも行っております。症状が出る前に“肝臓の声”に耳を傾けましょう。


まとめ:肝臓ケアは「糖尿病ケアの一部」です

糖尿病の治療は血糖値だけではありません。肝臓、心臓、筋肉といった全身の代謝管理が重要です。定期的な検査と栄養・運動療法を組み合わせて、MASLDの予防と早期発見を目指しましょう。


📍広島市南区 うじな家庭医療クリニック
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